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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第7章
「~~~っっ お、ぉにいちゃんの、変態っ バカっ も、キライっ!!」
最早 抗う手段は口だけとなった妹が、必死に抵抗するも、
「 “嫌いきらいも好きのうち” 」
と、全く聞く耳を持たない兄は、
掻き混ぜ過ぎて泡立ち始めた蜜壺を、また我が物顔で蹂躙し始める。
果たして、どうして “こんな抜き差しならない状況” に陥っているのか?
話は1時間前に遡る――。
21時半。
通常通りのレッスンを終え、ロッカールームへと戻ると、
案の定、匠海からメールが届いていた。
Title:終わったら連絡してくれ
Letter:
今夜はMercure Oxford Eastgate Hotel
に部屋を取っている。
何時まででも待ってるよ。
「……メルキューレ、って……」
ホテル名を確認した途端、
薄い唇から洩れたのは かっすかすの声だった。
それでなくても(兄の件で集中力散漫で)疲労困憊したレッスン後の精神状態の上、
ど~んと漬物石を積み重ねられたかの如く、全身が重苦しく感じ。
ベンチにのろのろ腰を降ろしたヴィヴィは、文字通りがっくりとうな垂れた。
双子の在籍するカレッジ、セント・エドモンド・ホール。
そのすぐ傍に位置するフランス資本のホテルは、屋敷から徒歩3分で辿り着ける “超ご近所さん” だった。
一体、何をそんなに「顔を見て話したい」の……?
ていうか、多忙の癖に、お昼から今迄、半日も待って。
まさか、宿まで取っちゃうなんて……。
てっきり近所で茶でもして要件を伝えたら、ロンドンへ戻るのだろうと高を括っていたのに。
予想の斜め上を行く匠海の行動に、うな垂れたまま、地べたを這う様な低い嘆息を零した。
とにかく、いつまでもこうしてもいられない。
常と同じく、クリスの運転で屋敷に戻ったヴィヴィは、スケート靴を磨き。
ぱぱっとシャワーを浴びると、
「ルーシー達と、パジャマパーティーするんだった」
そんなすぐにバレそうな嘘を執事に吐き、屋敷を出た。