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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第2章
(はぁ……、何だって、こんなことに……)
自室のバスルームの中、ぐったりしながら衣服を脱ぎ去ったヴィヴィは、重い足取りでシャワーブースへと入っていく。
熱い湯を頭から浴びながら手だけは通常通りに動かすが、洗っている小さな頭の中は突然の事にこんがらがっていた。
「………………」
自分が悪いのは解かっている。
昨年の5月に渡英してから、ヴィヴィは一度も松濤の屋敷に戻っていなかった。
当たり前だが、兄夫婦の新居も訪ねていない。
昨年の夏、恒例の英国里帰りにも同行しなかったし。
更に、今年の1月――(日本の)成人式にあたる日にも、ヴィヴィだけが帰国しなかった。
クリス曰く、
父は「ヴィヴィの一生に一度の晴れ姿、見たかった……」と、物凄くしょげかえっていたらしい。
――これ以上の親不孝があるだろうか?
それに、自分達は家族だ。
“ただの家族” に戻ると決断したのは、紛れもない自分自身。
なのに、己の役目を果たそうとせず、ただただ逃げ回っていた自分に、今更ながらに反吐が出る。
いつまでも逃げられる訳が無いのだ。
“あの人” ――
自分の血の繋がった兄であり、元恋人である、
篠宮 匠海――その人からは。
「…………はぁ」
シャワーが降り注ぐ中、微かに溜息を零したヴィヴィは手早く全身を清めると、
薄っぺらい身体にバスタオルを巻き付け、またもや重い足取りでバスルームから出た。
ロールアップしたクロップド・デニムに、白のタンクトップ、薄紅色の麻の長袖シャツ。
それらを纏ったヴィヴィの、スタイリングのコンセプトは――脱・肌見せ。
無造作にシュシュで結った金の髪といい、男目線の意識なんてゼロだった。
「ワンピース、お気に召しませんでしたか?」
リーヴが選んで出してくれていたのは、膝上10㎝のノースリーブ・ワンピだった。
「ううん。今日はデニムの気分だったから。ありがとね?」
主のクローゼットにワンピを戻す執事に礼を言い、ヴィヴィは私室から廊下へと出た。