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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第7章      

 けれど、

「ここで話、出来るでしょ……?」

 誘われた兄の部屋に行くのを、ごねた妹に、

「じゃあ、バーテンダーに言いふらしていい? 「この子は昨夜、実の兄に抱かれてました」って」

「……――っ」

 耳元で、そんなとんでもない ゆすりを掛けて来て。

 しぶしぶスイートに着いて行かざるを得なかった、ヴィヴィ。

 結果、部屋に通された途端、

「今朝、黙って帰ったお仕置きだっ」

 そう苛立ちを露わにした、匠海に襲い掛かられて。

 あれよあれよと身ぐるみ剥がされたヴィヴィは、全力で抱いてくる匠海になんて敵う筈も無く。

 あっさり陥落されて、この通り――。

 ダブルベッドに突っ伏されて、「あんあん」啼かされていたりする。



 背中で両腕を折り畳まれた状態で、頭だけで振り返ったヴィヴィは、

「嘘吐きっ」

 そう涙目で、背後から犯してくる兄を詰る。

「何が?」

 嘘吐き呼ばわりされる覚えに、全く心当たりの無さそうな匠海に、

「~~~っ もう、私のことっ 「抱かない」って、言ったじゃない!」

 1ヶ月前に兄から言われた言葉を、反芻してみせる。



『もう、無理強いしたくない』

『ヴィクトリアが俺のことを「欲しい」と思ってくれるまでは、抱かないと決めた』



 松濤の私室で酔い潰れたフリをし、誘ったのに。

 全く手を出す様子の無かった兄は、確かにそう断ってきたのだ。

 だからヴィヴィは「何を今更」と激怒し、今日まで “大の男を抱き続けてきた” というのに。

(言ってる事とやってる事が、一々噛み合って無いんだってばっ!!)

 己の言動は若干棚上げし、ヴィヴィはめい一杯、背後の匠海を睨み上げてやった。

「だって、ヴィクトリア。俺が「欲しい」だろう?」

 しれっと、妹の心の奥底を言い当ててくる兄に、

「ほ、欲しくないもんっ」

 思わず言い返した妹は、途端、薄い胸の奥で後悔する。

(あ゛ぁ゛っ 「もん」とか、何 可愛い子ぶってるの、わたしぃ~~っ)

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