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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第7章
硬い腹筋と薄い尻肉の間に溜まり、粘つく違和感と、
舌先で舐め取っているにも関わらず、じわじわと止まる様子の無い、目に痛いほどの鮮やかな体液。
その両者に意識が朦朧とし。
ヴィヴィはいつの間にか無心に、兄の血を啜っていた。
くすぐったかったのか。
微かに身を捩り吐息を漏らす匠海を、ちらりと上目使いに見上げれば、
視線が勝ち合った途端、頭だけを起こして何故か桃色の舌を差し出してきた兄。
「………………?」
意図が解からぬまま、謝罪の意味も込めてその舌を、ぺろりと舐め上げれば。
舌を引っ込めた匠海は、一瞬ののち、大きめの唇を綻ばせた。
「血の味、だ……」
そんな当たり前の言葉を発してくる兄に、微かに瞳を眇めて見せれば、
「俺とお前を繋いでる “血の味” だよ」
そう言い直された言葉に、ヴィヴィはまさしく絶句した。
血。
父を介して、半分だけ繋がった、
私とお兄ちゃんの血……。
ある時は、私を幸福に導き、
ある時は、私をどん底へと追いやった、
もう一つの、諸刃の刃。
確かに。
紛れも無く、2人を繋ぐのは、
今や “ただそれだけ” だった。
『今すぐは無理でも、お前は絶対に俺の元へと戻って来る。
お前は俺がいないと駄目だから――。
俺がいないと生きていけない――そういう子に仕立て上げたのだからね』
「……――っ」
もう、逃れられないのだろうか。
血という枷を外し、
肉欲という “禁断の果実” を貪った兄妹には、
まっとうな人生を歩む更生の道すら、残されていないのだろうか。
答えの帰って来ない絶望に囚われ、
その明確な解答を求め、更に兄の血を己に取り込む。
「近親相姦は蜜の味――?」
そんなもの、嘘っぱちだ。
だって、口内に広がるのは鉄錆の味。
鈍(にび)色で、殊のほか苦くて、
美味とは程遠く。
心解ける甘露も無い。
けれどこれが、
私達には、お似合いなのかも知れない。
家族を、
周囲を、
世間を欺いて。
日々 罪に手を染め続け、
そうして、もう、
戻れぬところまで、堕ちてゆく。