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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第7章      

「ヴィクトリア?」

「も……、なんでもいぃ……」



 愛人

 不倫相手

 恋人

 彼女

 ガールフレンド

 例え貼られたラベルを変えられたって、

 中身は全部同じ。

 自分の欲しいものを我慢出来ず、

 人のものに手を出す “泥棒猫” に他ならない。



「あはは! 愛しているよ、ヴィクトリア」

 がばっと上半身を起こした匠海は、破顔しながらヴィヴィの顔を覗き込んで来て。

 対するヴィヴィは、何とも言えない表情で、可愛い兄を見つめ返すのみ。

「……~~っ」



 ああもう、何だってこの男は、

 人が真剣に悩んでいる時に、

 こんなにも能天気に、笑っていられるのだろう。



「………………」

(まあ……いいか……)

 自分がいなければ「幸せじゃない」と、

 そう兄が言うのなら。

 自分は兄の傍にいる。

 「何で」って――?

 そんなの、決まっているじゃない。

 どれだけ 嘘吐き男でも、

 どれだけ 酷い男でも、

 振り回されて、

 奪い尽くされて、

 最期には放り捨てられると、

 そう、

 解り切っているのに。

 それでも、

 私が愛しているのは、

 昔も、

 今も、

 そして未来も、

 永遠に、この、

 “目の前の男だけ” なのだから――



 未だ「両想いに成れて嬉しい」と言わんばかりに、にっこにこの匠海。

 その両頬に びたんっと細い両掌を打ち付けたヴィヴィは、自分の唇を兄のそこへと押し付けてやった。

(ほら、キスしたかったんでしょ?)

 何故か上から目線の妹に対し、一瞬驚いてびくと躰を震わせていた兄。

 太ももに置かれていた両の掌が、手首、二の腕、肩を撫でながら上がって来て。

 そして大きなそれが辿り着いたのは、白く細い首元。

 まるで首を締め上げる様に掌を張り付けた匠海は、ゆっくりと薄い唇を吸い上げ、

 その甘い味を堪能すると、舌で歯列を割り開き、口内へと入って来た。

 熱く長い舌が、口内に残る血の味を、残さず舐め取り。

 1ヶ月ぶりの粘膜での交わりに、兄は我を忘れた様に、妹を奪ってくる。

 そしてその間も、

 大きな掌はずっと、細い首筋をやわやわと揉む様に撫でていた。

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