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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第7章
だから……。
私、肩揉まれると「首絞められてる」と思うほど、
首が苦しいの、ダメって言ってるのに……。
甘く苦い匠海の口付けを受け止めながらも、
どうしても心の中で、そう兄を詰ってしまう。
『 “ヴィクトリア” は死んだ?』
『死んだわ』
あの湖畔のヴィラで、
確かに自分はそう口にした。
そして、
匠海を愛する自分 と、
匠海が愛した自分 だけで無く、
空っぽの “容れ物” も、この世から抹消させんとしていた。
しかし、
2泊の間、匠海にずっと抱き続けられ。
挙句の果てに「お前が死んだら俺も死ぬ」との脅しまで、受ける始末。
他の男に土足で踏み荒らされ、
骨の髄まで穢され。
生きる気力も、微かな未来への展望さえも、失っていた自分を、
匠海は “兄だけが出来る方法” で、命を救ってくれた。
『そうか。じゃあ、息を吹き返させてやるまでだ――』
そして、今日。
ヴィヴィは兄の手によって、
本当の意味で “兄だけを愛し抜く愚かな自分” を蘇えさせられてしまった。
愚かだ。
目も当てられないほど、愚かで馬鹿げている。
けれど、
これが “篠宮 ヴィクトリア” なのだから、
もう四の五の言わずに腹を括って、
兄と自分に向き合う事にする。
ただ、
なぁ~~んか、ムカつくので、
取り敢えず今すぐは、
「好き」だの「愛してる」だの、
甘ったるい事は、言ってやらない事にもする!
そう、心に決めたヴィヴィは、絡み付いてくる匠海の舌を振り切り。
べりっと音を立て、深い口付けを解き。
「――って事で、帰る!」
きっぱりと己の意思を口にした。
「は……? どうして?」
いきなり帰宅の意を告げられた匠海は「訳が解からない」という顔をしていたが、
「~~~っ こちとら明日も5時起きでリンクに行くのよ、馬鹿っ!」
ヴィヴィは己の現状を、細い声で喚いていた。
10日後には、イタリアでショーに出て。
25日後には、シーズン初戦を迎えるのだ。
その1週間後には、待ちに待った大学の講義も始まる。