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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第7章      

 忙しい。

 自分だって、兄と同じくらい多忙の身なのだ。

 とっとと帰って休みたい。

 16歳の時のヴィヴィならまだしも、

 今の自分は21歳。

(ちゃんと夜休まないと次の日動けないんだぞこんにゃろう)

 大きな瞳で “恋人” を睨み上げるヴィヴィに、匠海も負けてはいなかった。

「だから5時に起きて、ここから歩いて3分の屋敷に戻れるように “こんな安ホテル” で手を打ったんじゃないか!」

「~~~っ」

 このホテルに脚を踏み入れて、すぐに覚えた違和感は、この為だったのか。

 ただ、ヴィヴィはもう数えるのが面倒になるほどイかされたし、

 匠海だって、1度 中にたっぷり出した筈だ。

(も、もう寝たいんです……っ (´;ω;`)ァゥゥ)

 昨夜も抱き続けられ、寝不足だったヴィヴィは限界だった。

「大丈夫、もう抱かないから。一緒にお風呂入って、寝ような?」

 宥める様な微笑みを湛え、覗き込んでくる匠海に、

「……本当にぃ?」

 全く信用していないヴィヴィは、胡散臭そうに唸って返す。

「ああ、本当だって。だってもう、ヴィクトリアは俺の “恋人” だからね。焦る必要は無いもんな」

 ぽんぽんと金色の頭を撫でる兄に、

(いや……恋人 じゃなくて 愛人……、まあ、どうでもいいけど……)

 そう心の中で反論したヴィヴィは、

「…………はいはい」

 そんな可愛くない返事を零しながら、諦めたのだった。



 言葉通り、妹をお風呂に入れ。

 隅々まで可愛がりながら、洗ってくれた兄。

 日付が変わる前にはベッドに入れたヴィヴィは、匠海に抱っこされながら就寝し。





 翌朝。

 5時に目覚めた妹に付き添い、歩いて3分の屋敷の傍まで送ってくれた。

「じゃあな」

 10℃に届かない早朝の冷たい空気の中、

 爽やかに白い歯を零す兄は、太陽の様に眩しかった。
  
 ――小雨がぱらつく程の、曇天だったけれど。

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