この作品は18歳未満閲覧禁止です
![](/image/skin/separater27.gif)
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第7章
![](/image/mobi/1px_nocolor.gif)
「今日の便で、帰るの?」
屋敷からは死角になる、ブロックの前で尋ねれば。
「ああ。寂しい?」
「……ちょっとだけね」
寂しいかと聞かれれば、寂しいかも知れない。
だって、つい先刻までその暖かな胸に、抱っこされていたのだから。
「ちょっとだけ、って顔には見えないけれどね?」
「………………」
眉尻を少し下げた匠海の言葉に、ヴィヴィは何も言えなくなり、唇を窄めてしまった。
「また連絡するから、電話に出て?」
今迄はメールだったのに、これからは電話を寄越すらしい。
「……「嫌」って言ったら?」
どうしても可愛くない返事を返してしまう妹に、
「屋敷の固定電話に電話してやる」
兄は負けじと、にやあと悪い貌で嗤って見せる。
「……はいはい」
本当にやりかねそうなので、大人しく言う事を聞く事にしよう。
「じゃあ……」
くるりと踵を返したヴィヴィは、そんな軽い別れの挨拶で、スタスタと屋敷へ向かい始めたが。
若干 後ろ髪を引かれ、ちらりと振り返った。
案の定、妹が屋敷に入るまで見守る気だったらしい兄は、数秒前と同じ場所に突っ立っていた。
「お兄、ちゃん……」
「ん?」
肌寒いのか、両手をポケットに突っ込んだ匠海は、嬉しそうに相槌を返してくる。
何故か「ありがとう」という言葉が、咽喉元までせり上がって来ていたが。
(「ありがとう」って、何が……?)
自分でも変な言葉だと思い、細い肩を竦めたヴィヴィ。
「……何でも、ない」
「そうか」
切れ長の瞳を細め、笑みを深くした匠海を一瞥し、
ヴィヴィは今度こそ、小走りで屋敷へと戻って行ったのだった。
鍵を開けて中に入り。
抜き足差し足忍び足――で、屋敷の右側に位置する2階の私室へと上がる。
そして「まさか、もういないよね?」と独りごちながら、窓から外を見下ろすと。
「………………」
ひょっこり窓から顔を覗かせた妹に、安堵の表情を浮かべた匠海が、
ヴィヴィから見える位置に移動して、見守っているのに気付いた。
![](/image/skin/separater27.gif)
![](/image/skin/separater27.gif)