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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第2章
「ダ……ダッド。ぐるじいぃ……」
渾身の力で抱き締められたヴィヴィが、押し潰される寸前の平らな声で訴えるが、
「駄目。もう離してあげない。このまま日本へ連れ帰ります」
父はそう、とんでもない事を発してきて。
「……っ えぇ~~っ!?」
「だって、ヴィヴィ。全然 家に帰って来ないし、成人式にも戻って来なかったし……。もう、ダッドは 激おこぷんぷん丸 なのですっ」
「………………」
どこの親父がこんなに拗ねながら、激おこぷんぷん丸 なんて死語をほざくのだろう。
半分は申し訳ないと思いながらも、残り半分は呆れ返ったヴィヴィを、グレコリーはようやくその抱擁から解放する。
「やっぱりヴィヴィは、金髪の方がいいねえ。生まれついて授かったものなんだから、大事にしないとな?」
「う、うん……。ごめんなさい……」
まるで幼児の様に頭をなでなでされて(別に謝る必要も無いと思うが)、ヴィヴィは雰囲気に流されて謝ってしまった。
「でも、お父様。ヴィヴィちゃんの黒髪、私は好きでしたよ?」
そう助け船を出してくれたのは、他でもない瞳子で。
「そうかい? まあ、確かに、新鮮ではあったけれどね~」
娘の腰に掌を添えて、グレコリーは自分の隣のソファーへと導いた。
ヴィヴィの斜め前、ベージュのチノパンに包まれた匠海の長過ぎる両脚を認め、
「………………っ」
そちらだけは視線を上げて見ない様にと、瞬時に心に留めた。
「日本で流されている、ヴィヴィちゃんのシャンプーのCM。凄く評判よ?」
匠海の隣に腰かけた瞳子に、気を付けながら視線を移す。
確かにスポンサーのP&JのCMは、黒髪で撮影したものだった。
自分は撮り終えた1週間後に、最終チェックの為に1度目を通しただけで、内容はうろ覚えだったが。
「そうだったんですか? 良かった。少しは売り上げに貢献出来てればいいけれど」
そう嬉しそうな声を上げながらも、灰色の瞳は瞳子の装いに注がれていた。