この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第8章
「むむむ……」
ランチ後の13時。
双子の片割れは、日課のお昼寝タイム。
ヴィヴィはライブラリーで、iPadを睨み付けながら、唸っていた。
21歳になり、頬の丸みは減ったとはいえ。
大きな瞳と、元来の愛らしい顔立ちのせいで、やはり童顔のままの小さな顔には、難しそうな表情が宿っている。
しかし、熱心に何やら打ち込んでいたiPadに、映し出されていたのは――
良い愛人
①相手の妻子に迷惑を掛けない
②相手の男を満足・安心させてあげられる
③経済的・精神的に自立した女
④自分を常に磨き上げる努力を怠らない
悪い愛人
①相手を離婚に追い込む
②不平不満を相手にぶつけ、分を弁えない
③金銭・肉体目当て
――そんな、馬鹿げた(じゃなかった)
当人にとってみれば、至極真面目に考え抜いた “己の理想とする愛人像” だった
「よしゃっ」
きりっと顔を引き締めたヴィヴィは、心を新たにし。
自分に与えられた限りある時間を、如何に有意義に過ごせるかに努め。
そして、
その “代償” を払わんと、心に刻んでいた。
翌日、9月9日(土)。
10時までのレッスンを終え、帰宅したヴィヴィは、
自室のデスクの上、レタートレイに置かれていた封書を開封した。
「………………」
しばらく無言で立ち尽くし。
そして振り返った先、灰色の瞳に留めたのは、廊下へと続く扉のドアノブ。
元々、この部屋は双子の兄のものだった。
しかし、あの忌まわしい事件をきっかけに部屋を入れ代わり、今はヴィヴィのものとなっている。
両親に連れられ日本へ一時帰国し、1週間後、英国へと戻って来た妹に、
『綺麗でしょう……? 僕が、選んだんだ……』
そう、少し自慢げに囁いたクリスが、何だか可愛かった。
信じていた人間に裏切られ、この部屋で命を絶とうとした妹が、ドアノブを見て苦しい思いをしないで済むようにと、
アンティークガラスで造られた可憐なドアノブは、いつも光を受けて、キラキラと柔らかく輝いてくれる。