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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第8章
ころんとしたそれを握ったヴィヴィは、扉を開け。
4つのベッドルームに面した長い廊下を通り抜けると、屋敷の左側に位置する、元自分の部屋の扉をノックした。
「はい……、どうぞ……」
入室を促す声に、静かに扉を開ければ、目の前に広がるのは、
白とライラックピンクに彩られた、妹の部屋とは対照的な、
白天井と白い窓枠に映える、紺の壁紙が印象的な、クリスの部屋。
窓際の一角を埋め尽くすように造り付けられた、背凭れの無い白の長椅子は、
双子の兄の 日向ぼっこ & お昼寝場所 だった。
常と同じように、お気に入りの場所に長い脚を投げ出し。
壁に背を預け、本の虫となっていたクリスに、ゆっくりと歩み寄ろうとすれば。
「あ、ヴィヴィ……。ごめん、デスクの上のラップトップ。取ってくれる……?」
ダークブラウンのライティングデスクを指差したクリスの言う通り、薄っぺらなノートPCを手に取ったヴィヴィは、窓際の兄に手渡した。
「ありがとう……」
礼を口にするや否やPCを開き、何か打ち込み始めたクリス。
その傍に腰掛けたヴィヴィは、足元に山積みにされた書籍のタイトルに首を捻る。
『イタリア税務法規集』
『タックスアンサー』
『盆栽と私』
『美しきかな錦鯉』
何なのだろう、この怪しい本の山々は。
「イタリア……?」
「まあね……」
何でも無い事のように頷いたクリスは、パタタと軽快な音を立て、PCを覗き込むのみ。
(確か1月前は、ロシアの判例集と、中国の陶磁器の本、読んでた気が……)
実のところ。
クリスは20歳で渡英してから、色々と手掛けているらしく。
半年前には、
「元本保証で、3ヶ月で1.5倍にして返してあげるけれど、どう……?」
と、悪徳商法さながらの謳い文句で、妹に投資を勧めてきた。
ヴィヴィは投資内容を確認もせず「じゃあ、お願い」と、5千万を預け。
結果、本当に3ヶ月後に1.5倍した金額が、手元に戻って来た。