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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第8章
「そう……。じゃあ、この屋敷を出る必要性は、全く無いよ……」
明らかにホッとした様子の兄に、思わず「え?」と問えば。
「僕だって、同じだ……。セフレ作って、愛人と変わらない……」
半ば投げやりに呟いたクリスに、ヴィヴィは驚きを隠せなかった。
「クリス……、そんなこと……」
「いや、愛人より最悪だよ……。そこには心なんて、無いんだからね……」
「………………」
自嘲気味に瞳を細める相手に、ヴィヴィは何とも言えない表情を浮かべていた。
半月前、「セフレがいる」と告白してきた双子の兄に、
「躰から始まる恋も皆無じゃないでしょ?」と、前向きに捉えて欲しがった自分。
けれど、当人にそんな気は全く無かったらしい。
「止めたって、無駄なんだよね……?」
ずれてしまった話の軌道を元に戻して来た相手に、ヴィヴィは迷い無く首肯する。
「うん」
今の自分を止められるのはきっと、
匠海本人か、その妻子しか無いであろう。
「じゃあ、今まで通り、一緒に居ればいい……」
当然の様にそう言ってのける兄に、妹が零したのは、戸惑いの問い。
「……どう、して……?」
(どうしてクリスは、いつも “そう” なの――?)
『応援も妨害もしない。
ただ覚えていて――?
どんな結果になっても、僕はヴィヴィの傍にいる』
『ねえ、ヴィヴィ……。
僕の隣で、ヴィヴィが笑ってる……。
それだけで僕は、本当に幸せなんだよ……』
いつも、
双子の兄が自分に求めるのは “ただ傍に居て欲しい” という事のみ。
それ以上でも、それ以下でも無い。
ヴィヴィはその度に助けられ、安堵を覚える。
けれど、
クリスは、こんな “出来損ないの片割れ” に “ただ傍に居て欲しい” などと、
本当に心から願っているのだろうか――?
だが、妹の問いに帰って来た兄の返答は、予想外なものだった。
「どうせ、ヴィヴィは また傷付く――」
「………………」
まるで未来を見て来たかの様に、断言したクリスは、
「そんな事は、無いって……?」
そう挑発する様に、瞳を眇め見据えてくる。