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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第8章
ヴィヴィがイタリアから帰国した、その翌日から2日間。
双子は日英各社の取材を、オックスフォードS・Cで纏めて受けていた。
30分だけ練習も公開し、その映像は今夜、各国のニュースに乗るという。
そんな中、ヴィヴィは本日最後の取材相手だった鈴森 明子(38)と、カメラが回っていない所で、雑談していた。
「大学、10月から始まるんだっけ?」
くりんくりんの瞳で、興味津々に尋ねてくる鈴森に、ヴィヴィは満面の笑顔で大きく頷く。
「はいっ 先日、ガウン買ったんです! 教材も徐々に揃ってて、もう「やっと!」って感じです」
主に試験や式典での着用を義務付けられている、オックスフォード学部生の黒ガウン。
1週間前のFamily and Friends Dayで手に入れたヴィヴィが、さっそく袖を通して喜んでいたのを、
クリスと朝比奈が、瞳を細めて見つめていたっけ。
ちなみに、同居人のダリルは、
「そんな “試験” を連想させるもの着て、何が楽しいのヨ!」
と、呆れ返っていたが。
「そっか~。でも勉強と両立、大変そうだね。頑張れ!」
ヴィヴィが書いた「死ぬ気で頑張る! 死ぬほど頑張る!」という、無茶苦茶な “今季の目標” をしたためた色紙を、こちらに向けてくる鈴森。
確かに。
11月半ばにあるエリック・ボンパール杯(GPフランス杯)と、その後のGPファイナルは、第1学期(ミカエル ターム)の真っ最中にあるのだが。
それでも、昨シーズンのプータロー生活に比べれば、大変でも “前に進める事” に幸せを感じていた。
「今日、戻るんですか? 日本」
壁掛け時計を見上げながら尋ねたヴィヴィに、
「そうなの。19:35のロンドン発のでね。本当は観光とか、したいんだけど~」
残念そうに肩を竦めて見せた鈴森も、スケートシーズン到来でどうやら多忙らしい。
(って事は、明日の15時過ぎに、羽田に着くのか……)
ざっと計算したヴィヴィは、途端にしょぼんと、細い肩を落とす。
「……いいなぁ」