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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第8章    

「ん? 何が「いいなぁ」なの?」

 不思議そうに瞳を瞬かす鈴森に、

「あ……、んっと、家族に会いたくなっただけ、です」

 思わず心の声が漏れたヴィヴィは、そう “真実” を口にした。

「そっか。ふふ。後もうちょっとで戻れるよ?」

 10日後には、日本へ帰国予定のヴィヴィを、柔らかな笑顔で元気付けてくれた大先輩に、

「ん。そうですよね」

 ヴィヴィは素直に頷き。

 鈴森と日本での再会を約束し、取材を受けていたミーティングルームを辞去したのだった。







 ジャパンオープンまで 1週間、
 
 GPシリーズ NHK杯まで 2週間、

 を切った、9月22日(金)。

 双子はNHK杯のリハーサル1回目を行っていた。

 本番を想定し、衣装を着用しての6分間練習。

 そして、10名の出場者中、一番世界ランキングが上位である双子は、

 5番目(最終)の滑走順を想定し、待ち時間のアップの手順、実際の演技内容等の確認を行った。

 ショーンコーチから、技術的な指摘を受けた後、

「ヴィヴィ、新しいヒップスカーフ、どうだった?」

 渡英後から世話になっている、フランスの衣装メーカーのスタッフが掛けて来た問いに、

 ヴィヴィはシンプルにお団子にした金の頭を、ぶんと縦に振る。

「滑った感じは前より軽く感じます。フリンジ(紐飾り)着けたから、てっきり重くなると思ったのに」

 黒い衣装の腰に巻く、三角の赤いヒップスカーフ。

 それを巻く事により、タンゴの雰囲気が色濃く出るのだが、

 引き換えに、黒衣装のスカート部分のひらめきが、抑えられてしまい。

 ならば、ヒップスカートの裾にフリンジを着け、動きが出る様にと改良して貰っていた。

「フリンジで重くなる分、スカーフの生地を薄くしたの。お陰で前より軽やかで、かつ下の黒地が透けて妖艶にもなったわね」

 録画した映像で確認しても、デザイン変更後の方が、ぐんと視覚的効果が上がっているのを実感し。

 オフリンクで鏡を前に、生地の寄れが無いか等、最終チェックをしていたヴィヴィ。

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