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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第8章    

「よく気付いたね。そう「飛ぶぞ! 飛ぶぞ!」と気合が漲り過ぎて、助走の最後のへん。若干 顎が上がって、つられて視線も上がってしまっている」

「ははあ、なるほど……、だから、踏切のタイミング……」

 そうと解っては、居ても立ってもいられないヴィヴィ。

 またリンクへと駆け出して行くと、助走を付け。

 顎に気を付けながら、アクセルを飛び直せば。

「うん、その感じだよ」

「忘れないようにね~!」

 コーチ陣に太鼓判を押されるほど、クリーンに着氷出来た。

 本人は全く無意識だった事に「はい。気を付けます、顎」と、素直に心に留めたヴィヴィ。

「はは。元気いっぱい、やる気いっぱいなのは、ヴィヴィの取り柄だけれど。でも “今季の目標” は「死ぬ気で頑張る! 死ぬほど頑張る!」じゃなく「静かに燃える」の方が良かったかもしれないねえ~」

 皺くちゃの手で教え子の頭を撫でながら、クリスの “今季の目標” と比較し、からかってくる恩師に、

「…………むぅ」

 ヴィヴィは薄い唇の中、小さく唸って悔しがったのだった。

「ヴィヴィ、FSの衣装は問題 無いかしら?」

 先週に引き続き、双子の衣装を請け負ってくれている、フランスのメーカースタッフの声に、

「ああ、とても素敵なものを、創って貰ったねえ」

 薄い身体を包む衣装に、懐かしそうに瞳を細めたコーチ。

 ヴィヴィはその場でくるりと回ってみせ「全く問題ないです」と、満足気に頷いた。
 
 今回、FSの衣装を決めるに当たり、振付師の宮田 賢二に意見を求めたのだが、

「青とか紺をベースに、金やオレンジのアクセントが効いてる感じ」との提案があり。

 それを聞いていたショーンコーチが「こんな感じかな?」と見せてくれたのが、

 彼の元教え子、サーシ・コーエン(USA)が2002-2003年のシーズンに着用していた衣装だった。


――――
※ジョン・ニックス コーチの師弟、
 サーシャ・コーエン(USA)「ピアノ協奏曲第二番(ラフマニノフ)」
 コートニー・ヒックス(USA)「黒い瞳」
 の衣装と同じもの~♡
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