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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第8章
「わあ、素敵! 私最近、長袖 着てないし、こういうクラッシックなデザイン、新鮮でいいかも」
全25曲からなる、壮大なカンタータ『カルミナ・ブラーナ』。
“運命” という雄大過ぎるテーマに、相応しそうなそれは、
前身頃は胸下まで、胸の凹凸に沿わせVに開いており、裏身頃も腰までV字で開き。
その縁取りは、まるで蕩けた純金を垂らしたかの様に輝いている。
そして、長袖の袖口とスカートの裾は、山吹色に染められ。
鮮やか、かつ、目を惹く色味でとても素敵だった。
宮田からもGOサインが出て、デザイナーがヴィヴィの華奢な身体を優雅に見えるよう、デザインを工夫してくれ。
そうして出来上がったFS『カルミナ・ブラーナ』の衣装は、
昨年、我を貫き通す教え子を、旨くコントロールし。
正しい方向へと導き、現在の状態にまで引きずり上げてくれた “恩師に対する感謝” をも込めた一着となったのだ。
(うっしゃ~~っ! これ着て、顎も気を付けて、ノーミスして。絶対にショーンコーチに、世界選手権の金メダル、掛けて上げるんだっ! がおぉ~~っ)
先程「静かに燃えろ」と注意されたばかりなのに、全く変わらず “やる気漲りまくり” の生徒に、
若干諦め気味のお爺ちゃんコーチは、それでも愉しそうに笑っていたのだった。
その日の夜、23時過ぎ。
ヴィヴィは日課となった匠海とのSkypeを、就寝準備万端の状態で楽しんでいた。
一方、スーツ姿の兄は(日本時間・翌朝の)7時過ぎだというのに、もう出社しているらしく。
先程、iPadで映して見せてくれたオフィスには、まだ2・3人しかスタッフが居ない様だった。
『いよいよだな』
「うん」
『お前達の冬が始まるんだな~。また、沢山テレビで双子に会えると思うと、ワクワクするよ』
切れ長の瞳をうっそりと細める匠海は、窓から差し込んでくる朝日を受け、とても爽やか美形男子なのだが。
―――――
※カンタータ:オーケストラ付きの声楽曲