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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第8章
『フィギュアスケートの本格的なシーズンが、明日、ジャパン・オープン2023で幕を開けます』
男子アナの言葉に、女子アナが続く。
『その会場、さいたまスーパーアリーナには、高畑 大輔さん、篠宮 ヴィクトリア選手が来て下さっているようです。小島さんお願いします――』
「はい、中継繋がりま~す」
スタッフの声に、小島アナウンサーが中継を引き継いだ。
「はい。――ということで、練習の合間を縫い、お2人には特別に、こちらへおいで頂きました。よろしくお願いします」
「「よろしくお願いします」」
「高畑さん。いよいよ、明日開幕ですね。どんなお気持ちですか?」
小島アナの問い掛けに、プロスケーターの高畑が、肉感的な唇を開く。
「そうですね。明日、久々に振付けたフリーの初披露なので、とても楽しみにしています」
その隣、若干気を抜いて ふむふむと頷いていたヴィヴィにも、小島アナが話を振ってくる。
「篠宮選手。今シーズンを戦い抜くFSがですね、明日いよいよ、初お披露目ということになります。今日、公式練習を終えて、手応えはどうですか?」
「まずまずって感じ、です」
未だどこか あどけなさの残る小さな顔には、満更でもない笑顔が宿っていた
「まずまずとは?」
具体的な説明を求めてくる小島に、大きな瞳をきょろりと彷徨わせたヴィヴィは、言葉を継ぐ。
「ええと、アクセルの確率も上がっていて、シーズン初戦にしては滑り込めているので、例年よりは安心感がある……って感じです」
何せ、昨年の5月からずっと “プー” なのだから、時間は余りある程あった。
「それは頼もしい」
特徴的な渋い声で喜んでくる小島アナに対し、チームメイトの高畑は違った。
「っていうか、ヴィヴィ。強力な助っ人いるしな?」
そのフリに、一瞬 何を言われたか判らなかった、ヴィヴィだったが。
「あ゛~~……」
何故か金色の頭を抱え、変な唸りを上げる。