この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第2章    

 今すぐ誰かに押し付けたくて。

 焦ったヴィヴィに気付いたのか、

「ほら、匠斗……。叔父ちゃんが抱っこ、してあげる……」

 クリスのその声に、ヴィヴィは立ち上がって傍により、慎重に匠斗を預け渡した。

「私……。コーヒー、淹れてくる」

 いきなりそう言って、今いるリビングから離れようとしたヴィヴィ。

「お嬢様。私がお淹れ致しますよ?」

 自分の為に紅茶を用意してくれたらしいリーヴに、金色の頭をゆるゆると振る。

「ううん、自分で淹れる。ありがとう」

 そう断ったヴィヴィは広いリビングとダイニングを抜け、キッチンへと逃げた。






 広く機能的なキッチンの隅っこ。

 リビングから聞こえてくる賑やかな歓談を耳にしながら、ヴィヴィはそちらに背を向けていた。

 ゴリ……ゴリ…ゴリゴリ。

 初めは重いコーヒーミルの手応えが、徐々に緩和されていき、

 代わって辺りに漂い始めた挽き豆の香ばしい香りに、心底ほっと息を吐き出す。

 一旦手を止めて、深く深く、その香りを胸いっぱいに吸い込む。

 そうすると、先程まで囚われていた薫りから、解放されるような気がして。
 
 赤ん坊特有のどこか甘ったるい、あの薫りから。

 けれど、

 両手にはまだ残っている。

 あの暖かな体温が。

 あの柔すぎる感触が。

 掌に残っていて、

 そこから腕を這い上がって、咽喉と胸をこれでもかと締め付けてくる。

 今になって……、

 もう、1年超も月日は経過しているのに、 

 今更、認識させられた。

 自分の愛していた男が、
 
 匠海が、

 瞳子と愛し合ったという事実――。

「………………」

 そんな事、渡英する前にも、解っていた筈だったのに。

 まだ自分の目の前にはいなかった、2人の子供。

 それをどこか、虚像の様に遠い存在に思っていた。

 けれど、今、まさに目の前に、2人の愛の結晶がいて。

 そして自分は、

 叔母として、

 匠海の妹として、

 その新しい命の誕生を受け入れたのだ。
 
/1163ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ