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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第8章
「………………」
(どこが「でかした」なんだろう……?)
眉をハの字にし、甥を見下ろすも。
焦茶色の瞳で、真っ直ぐに自分を見上げてくる幼児に、何故か腰が引けてしまう。
「た、匠斗……」
「び」
再会して初めて、自分の名前(らしき発音)を呼んだ匠斗。
「えっと……。これは “おもちゃ” じゃないよ?」
「び」
「んっと……、あの、離して?」
愛らしい手で掴み上げられている一房を指しながら懇願するも、何故か頑固に譲らない ちびっこ。
「あははっ こうなると、しばらく離さないぞ?」
妹と息子の応酬に、可笑しそうに笑う匠海に、
「え~~……」
ヴィヴィは情けない声を上げ、顔を顰めながらも色々と諦めた。
「……匠斗は、どうなの?」
「ん?」
匠海の暖かな相槌に、ヴィヴィは問い直す。
「 “英才教育” 」
「ああ。ふ……っ もちろん、しているよ」
形の良い唇を綻ばす男に、薄い胸がとくりと波打つ。
「産まれる前、から?」
父・グレコリーのJAZZ好きが高じ、篠宮家の子供達は皆 “JAZZで育てられた” と言っても過言ではない。
それは妊娠時の胎教から始まるのだから、その執念深さ(?)は只者では無かった。
「産まれた後、から。そうそう、匠斗は TAKE FIVE がお気に入りで。なあ~、匠斗?」
愛息子に囁く匠海に、くるっと振り返った匠斗。
その小さな手には、まだしっかりと金の髪が握られていた。
「1歳児、が……。しぶいねえ」
自分達の幼少期を棚上げし、ヴィヴィは しみじみ甥を見下ろす。
「あれだよ。ヴィヴィの4年前のエキシビ。観せると喜ぶから、何度も見てるんだよな?」
「びっ」
17歳の頃。
プロスケーターの高畑大輔に振付けて貰った、男装JAZZナンバー。
何故か甥は、それに酷くご執心らしい。