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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第8章
「あ……、だから……?」
ようやく “ほぼ交流が無かった叔母の名前” を、真っ先に覚えてしまった甥っ子に、ヴィヴィは合点が付いた。
「たぶんな。ヴィヴィの名前を最初に口にしたのは、そのせいかも」
そう答えた匠海の端正な顔には、どこからどう見ても “してやったり” という表情が浮かんでいた。
何だろう。
匠海が施す “英才教育” の意味合いが、何処か間違っている気がするのは、ヴィヴィの気のせいだろうか?
「この前は、グランパのベースで、リズム取ってたもんなあ? 匠斗~♡」と、父が。
「 “篠宮の遺伝子” 確実に、継いでまちゅね~♡」と、母が。
デレッデレの両親が面白くて「あははっ」と声を上げて笑ったヴィヴィに、
振り向いた匠斗が、ソファーの上で立ち上がった。
「ん?」
不思議そうに微かに首を傾げたヴィヴィに、甥はソファーの座面の上、短いあんよで更に傍に寄って来る。
「あ、そうそう。この前、写真を整理していたら、匠海のピアノ発表会の写真が、大量に出て来てね~。匠斗に見せてあげようと。匠海~、ちょっといらっしゃい」
ジュリアンにそう促され、匠海がソファーから腰を上げながら、こちらを振り返る。
「ああ。ヴィヴィ、匠斗、預かってて?」
「ぅえ……っ!? ちょ……っ まっ」
兄のまさかの言葉に、目を白黒するヴィヴィに、
「び」
何故か甥は、目の前の華奢な身体に、細い両腕を伸ばして縋ってきて。
「………………」
思わず、その丸っこい身体を、両掌を添えて支えてしまった ヴィヴィの胸の中、
「び……び……」
まるで甘える様に、ワンピの布地に ちっちゃな顔を擦り付けてくる “最愛の兄” の息子。
そして、
「あはは。可愛いなあ。娘と孫をセットで愛でられるなんて、私はなんて幸せ者なんだろう~」
心底 幸福そうに眦を下げる父。