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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第8章    

 けれど、クリスの言葉にも、義姉は嬉しそうに両手を叩く。

「あら、全く気にしないわ。苦手ということは “伸びしろ” があるという事ですもの」

「………………」

 義姉は本当に “他人の素敵なところ” を探すのが、上手な人だと思う。

 「教えがい、あるわぁ」と張り切る瞳子に反し、

 ヴィヴィの薄い胸は、ぐぅっと締め付けられていた。

(きっと……たぶん……。

 お兄ちゃんは、お姉さんのこういうところに、惹かれたんだろうな……)

 そして、兄のその審美眼を、ヴィヴィは確かなものだと思う。

 ただ――、

(な、なんか、めっちゃ、見られてる……。

 てか、そんな目で見つめてたら、駄目っ

 皆に気付かれちゃうよ……っ)

 何故か、目の前に坐する匠海からは、

 “愛しくてしょうがない” と言いたげな熱烈な視線が “自分に対して” 送られているけれど。

 そのお陰か?

 義姉に対して覚えた敗北感は、まあ、瞬時に消え失せてくれたけれども。

「キッチン、爆破されても構わないなら、どうぞ……」

 ここまで言っても無駄なら――と、若干 突き放す様なクリスの言葉に、

「えっ!?」という、瞳子の驚きの声と、
 
「さ、流石に、爆破まではさせてないけどっ!?」という、ヴィヴィの不満声が重なる。

「この前、キッチン、真っ白になってた……」

 じと~~、と隣の妹を見下ろす双子の兄。

「あ、あれは……。ミキサーで生地、混ぜたら、手っ取り早いと、思って……。こ、小麦粉を……」

 1ヶ月前。

 サブコーチの誕生日祝いにと、無謀にも1人でケーキ作成に挑んだのだが。

『ふむ。「小麦粉をふるいにかけろ」とな? ええい、ミキサーで細かくなるでしょっ」

 ふるいの置き場所が分らなかったヴィヴィは、目に見える場所にあったミキサーに、どばどば小麦粉を投入した。

(どうやら蓋の締め方が甘かったらしく)スイッチをオンにした途端、広いキッチン中に白い粉が舞い踊り。

 結果――吹雪で前後不覚に陥った雪山の如き “真っ白” に。

「だから “粉塵爆発 寸前” だったでしょ……?」 

「……~~っ」


―――――
※粉塵+酸素+火種 があれば、小麦粉・粉砂糖・コピートナーでも爆発するよん

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