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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第8章
「………………っ」
一瞬、動きを止めた長い指。
けれど、
暖かなそれは、己の熱を分け与える様に、柔らかくヴィヴィを擽り始めた。
ひんやりとした耳たぶを、指先で揉み解されたかと思えば。
耳の輪郭をも、モミモミされて。
その暖かさに瞳を細めれば、
瞳の下を両の親指で辿られながら、ほっぺを撫で撫でされてしまう。
(やぁ……、くすぐったい……)
身を寄せて来た兄の、彫りの深い眉の下。
陰になった切れ長の瞳は、まるで酩酊状態の様に薄墨に煙っていた。
長い指先で、金の髪を掻き上げられたかと思えば、
すらりと高い鼻が、ヴィヴィの耳の後ろに擦り付けられ。
そこで深く呼吸されれば、恥ずかしさに頬が熱を持つ。
けれどその行為は、ヴィヴィにも幸福を運んでくれた。
細い鼻を小動物の様にスンと鳴らせば、
鼻腔に入り込んで来たのは、兄だけの香り。
深い森林を連想させるそれに、少々アルコールが混ざった、大人の男の薫り。
身体の脇に降ろしていた両腕を伸ばし、目の前の逞しい胸に縋り付けば。
華奢な躰はすっぽりと、広い胸に閉じ込められた。
(……あ、れ……?)
兄の胸に抱き込まれてしまった両腕に伝わる鼓動が、思いの外 速くて。
意外に思っていると、剥き出しの首元で「はぁ」と、火傷しそうな程 熱い息を吐かれた。
「……おにぃ、ちゃん……?」
(熱でも、あるの……?)
ヴィヴィが的外れな質問を吐くよりも早く、抱擁の腕を緩めた匠海。
胸元で折り畳まれていた細腕を、引っ張り上げられ、
「……首、掴まってろ」
常より低く擦れた声で、囁かれた途端、
ヴィヴィは主に命令された奴隷の如き従順さで、その首筋に両腕を絡めたのだった。