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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第2章    

「「今日は1年3ヶ月ぶりに家族水入らずで過ごすので、夜のレッスンはお休みします」って電話したら、「どうぞどうぞ」って言われたわ」

「……――っ」

 何でもかんでも一方的に話しを進めてしまうジュリアンに、ヴィヴィはむっとしたが、

「じゃあねん♡ あ、リーヴ。お酒、たっくさん用意しておいてね? なんたって “未成年は匠斗だけ” なんですもの、うふふ~~」

 娘と執事にひらりと手をかざし、他の皆とリビングを後にしていくジュリアンなのだった。







 匠斗――兄の名前を一文字頂いたその子供は、

 目が覚めた途端、めちゃくちゃ動き回っていた。



 オックスフォード観光から戻ってきた篠宮御一行様と、しぶしぶディナーの席を囲んでいたヴィヴィは、

 そのちびっこギャングの振る舞いに、ただ1人、おろおろしていた。

 掴まり立ちなんてなんのその。

 その辺の家具に掴まり、伝い歩きを始めたり。

 物凄い高速のハイハイで駆けずり回ったり。

 角に頭をぶつけるんじゃないか?

 外に出て行ってしまうんじゃないか?

 目を離した隙に、何かを誤飲してしまうんじゃないか?

 本当は匠海の子供なんて、視界の隅にも入れたくないのだが、

 あまりに危なっかしく見える甥っ子に、どうしても視線が行ってしまう。

(てか、何でみんな、放置状態なのさ……っ)

 最初は匠斗にご飯を食べさせていた瞳子も、ある程度食べたと分かったら、自分の食事に取り掛かり。

 匠海は匠海で、時折は自分の息子の居場所を確かめてはいるようだが、ただ、それだけで。

 父と母に至っては――呑んだくれているので、全く話にならない。

 調理と給仕に忙しいリーヴは、鼻から当てにしていないが。

「…………もうっ」

 口の中で小さく舌打ちしたヴィヴィは、自分の食事を切り上げて席を立ち。

 取り敢えず匠斗の傍のソファーに腰を下ろし、視線だけでその動向を監視していた。

「こら、ヴィヴィ~~! 親の勧める酒が飲めないっての~~っ!?」

「……はぁ……?」

 甥を心配して嫌々 傍にいるだけなのに、

 ダイニングテーブルにいない = 酒の勧めを断っている
 
 という等式を勝手に組み立ててしまった母に、ヴィヴィは呆れた声を上げる。

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