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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第8章    

「はぁ……、こんなヴィクトリア見るだけで、また達しそうだ」

 耳元で囁く兄の声は、心底幸せそうなのに。

「……な……、なんでぇ……?」

 一緒に達した筈の妹は、蚊の鳴くような小声で、失望を露わにしていた。

「え……? ヴィクトリア?」

 驚く匠海の言葉も届かない程、ヴィヴィは呆然としていた。



 何で?

 どうして?

 自分が愛人だから、

 もう、ちゃんと抱いてくれないの? 

 ヴィヴィが、

 ヴィヴィが愛人だから、

 お兄ちゃん、もう……中で受け止めさせて、くれないの?



「ヴィクトリア。おい、ヴィクトリアってば」

 名を呼んでも、凍り付いた様に びくともしない妹に、

 兄は細い顎に指を添えると、くいと後ろへ振り向かす。

 そして、そこに浮かんでいた悲壮な表情に、匠海はすぐに理由を察したらしい。

「中に欲しかった?」

「………………」

 ふいと視線だけ外したヴィヴィにも、匠海は嬉しそうに囁いてくる。

「これからベッドで、沢山 舐めてあげたいから」

「………………」

 未だ視線を反らしたまま、顎に梅干をこさえて不貞腐れるヴィヴィ。

 広い肩を竦めた匠海は、若干 苦笑しながら次の言葉を吐いた。

「ほら、25日ぶりにセックスしたら、俺 暴発するだろう?」

 確かに。

 匠海は暫らく吐精していないと、早々に暴走してしまうたち――だけれども。

 その匠海の告白は、全然救いにもならなかった。

「……――っ」



 嘘、ばっかり。

 本当に、

 嘘ばっかり。
 


 どうしても、妻帯者の兄の言葉が信じられなくて。

 けれど、

 自分はそれを詰る権利を、自ら放棄したのだ。

「………………」

 軋む心から目を背ける様に、目蓋を伏せようとした。

 その時。 

 自分の顎を捉えていた、長い指が離れて。

 思わず目で追ってしまった、その手の行き着いた先――

「う~~ん。一応、昨日、ヴィクトリアのカーニバル・オン・アイスの動画見ながら、こうやって、自分でヌイて――」

 大きな掌で太い陰茎を包んだ匠海は、常の様子を妹の目前で再現し始め。

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