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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第8章    

 しかし、

「……す、すべて……は、ちょっと、言い過ぎかと……」

(私……、すぐ、のめり込んじゃうから……。

 全て……だと、

 かなり色々と、手に付かなくなっちゃいそう、で……)
 
 大きな瞳を泳がせながら、若干 恐々と訂正してくる妹に、

 兄は怒るどころか、鳩が豆鉄砲を食らったかの様な表情を一瞬浮かべ。

「あははっ そうだな」

 白い歯を零しながら、金の前髪が張り付いたおでこに、自分のそれを押し付けた。

 つられて、自然と口角を緩めたヴィヴィ。

 やんわりと兄の長い指の拘束を解くと。

 自由になった両腕を伸ばし、匠海の首にうっとりと巻き付ける。

「……逢いたかった、の」



 凄く。

 すごく、逢いたかったの。

 あの日。

 自分の将来を決意した日から、

 その気持ちは、

 どんどん日を重ねるごとに、強くなって――



「うん」

 柔らかな相槌を打つ匠海に、ヴィヴィは更に言い募る。

「会って……、ウサギさんより沢山、おにいちゃんにくっ付きたかったの」

「……ウサギさん? ああ、ヴィヴィ・ウサギか?」

「ん」

「ヴィヴィ・ウサギに、ヤキモチ焼いてたの?」

 兄の再度の確認に、妹は何故かむすっとし、

「……うんっ(-_-)」

 そう不貞腐れた声で唸った。

(あんにゃろめ。縫いぐるみの分際で、私よりも沢山、お兄ちゃんと一緒にいられるだなんてっ!)

「ぶははっ 可愛いなあ、お前は本当に」

 21歳とは思えぬ幼い一面に、破顔した匠海。

 「あ~も~」と何故か困った様に唸ると、

「大好きだよ」

 そう、直球の告白をしてきて。

「ん」

 にっこり微笑んだヴィヴィに、匠海は更に言葉を継ぐ。

「愛してる」

「そ?」

 何故か疑問形で首を傾げた妹に、兄はらしくも無く、力んで見せた。

「もんのすんごくっ 愛してる」

 そんな匠海が、27歳とは思えぬ、少年みたいに可愛くて。

「ふふっ ……だったら――」

 「ん?」と覗き込んでくる兄に対し、

 妹の小さな顔からは、春先の淡雪の如く、ふっと笑みが消えた。

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