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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第8章    



 その1分後――



「……? ヴィクトリア? おい?」

 ぺちぺちと、優しくほっぺを叩いた匠海。

 全く何の反応も返してこない妹に、やっと気付き。

「あ……。やってしまった――」

 薄暗い寝室に響いたのは、

 そんな間抜けな、匠海の懺悔なのだった。









「ごめん」

「………………」

「申し訳ない」

「………………」

「本当に、ごめんって。だって、ヴィクトリアが、あんまりにも可愛いから。抑えが利かなくって」

「~~~っ!!」

(人のせいにするなぁ~~っ!!)



 ようやく意識を取り戻した兄の浴室。

 湯に浸かりながら、そんな下らない応酬を繰り返した兄妹。

 風呂から上がれば、時刻はとうに翌日へと変わっていた。

 兄のリビングでそれを確認したヴィヴィ。

 先程までの賑やかさとは一変、ふわりと清楚な笑みを零すと、

「おやすみなさい」

 そう就寝挨拶ひとつ残し、右隣の自室へ戻らんと、兄から離れていく。

「こらこら、どこへ行く?」

 後ろから細い手首を掴み、問うてくる匠海に、

「えっと……」

 振り向く事も出来ず、背を向けたまま言い淀むヴィヴィ。

「なんだこら。俺と一緒に寝るのは嫌ってかぁ~~? 「もうっ 兄貴、加齢臭ひどいんだよっ」ってか? あぁんっ!?」

 匠海らしくもない、オラオラ系で凄んで来られ。

「んな訳ないでしょ! お、お兄ちゃんはいっつも、いい香り、するもんっ」

 思わず振り返ったヴィヴィは、必死に兄の誤解を否定する。

「じゃあ、一緒に寝て? もう抱かないから。ついでに、さっきシーツも変えたから」

 してやったりと ほくそ笑む匠海の前、

 ヴィヴィは所在無げに、灰色の瞳を彷徨わす。

「…………そういうこと、じゃ、なく、て……」

「ん? ああ、匠斗なら もうぐっすりだよ」

「………………」

 手首を掴まれたまま、黙り込んでしまった妹を、

 兄は金の頭を、軽くひと撫でし。

「ほら、ヴィクトリア」

 その手で細腰を絡め捕り、容易く横抱きしてしまった。

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