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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第2章    

 よって、呑むペースも、自分がどれだけ呑めるのかも、何も知らないヴィヴィは、

 シャンパンをカパカパ空けてしまい……、当たり前だが酔っぱらってしまった。

「ヴィヴィ、呑み過ぎだぞ?」

 父を挟んで向かいに座る匠海の、その窘める声に、

「だいじょぶだも~~ん」

 浮かれた声を上げたヴィヴィは、すくっと席を立つ。

 ダイニングからまたリビングへと移動してソファーに座り込み、

 その先のサンルームで、クリスと遊んでいる甥に視線を移す。

 何だか頬が火照って。

 冷たさを求めて、少し汗をかいた細長いグラスに、ぴたりと頬を寄せる。

「………………」

 視線の先、匠斗はクリスには凄く懐いていた。

 先程、どれだけ自分がじいと見守っていようと、ちらっと焦茶色の瞳を向けただけで、

 後は無心に自分の世界に没頭していた癖に。

 今はクリスの胡坐の中で、大きなビーズクッションに短い手を伸ばし「マンマ」と言っている。

(それ “マンマ(ご飯)” じゃないし……)

 心の中で11ヶ月の子供に突っ込んだヴィヴィ。

 少し辛口のシャンパンに口付けながら、胡乱な瞳を甥っ子に向ける。

(あ~……、判るんだね。そんなにちっこくっても……。

 自分を愛してくれる人間と、そうじゃない人間とは……)
 
 空になったグラスの柄を握り直し、クロップド・デニムに包まれた細い両脚をソファーに引き上げる。

(君は、幸せだねえ。あんなに優しくて、愛情深いお兄ちゃんに愛されて。

 本当に幸せ者だねえ。……心底 羨ましくて、恨めしい――)
 
 そう、思わず毒を吐いてしまった、直後。
 
 シュシュで結い上げた金の頭が、こてと倒れる。

(……うん……? 恨めしい? 羨ましい? 恨めやましい? ……最近、難しい日本語使ってないから、よく解んないや……)

「ふわわ……」

 大きな欠伸を掌の中に吐き出していると、

「おや、ヴィヴィ。もう “おねむ” かい?」

 いつの間に来たのか、ワイングラス片手に父が隣に腰掛けていて。

「ん~~、でも呑むぅ♡」

 にゃはぁという表現が相応しい締まりの無い笑顔を、グレコリーへと向ける。

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