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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第2章
匠海夫婦の事は抜きにして、やはり嬉しい気持ちもある。
こんな駄目ダメな娘でも、両親はまだ愛してくれていると解かって。
酒の力のせいもあるのかもしれないが、薄い胸の中に喜びの感情が膨れ上がって、父に向ける瞳も嬉しそうなものになった。
「もう、可愛いなぁ~、ヴィヴィは♡ しかしなるほど。ヴィヴィはお酒を呑むと、眠くなっちゃうのか」
片腕で娘を抱き寄せ、その金の頭のてっぺんに、ちゅっちゅっとキスを落としてくる父に、
「ダッド、注いで ついで!」
ヴィヴィは空になった細いグラスを、軽く振って見せる。
「はいはい。まあ、家だから眠くなってもいいしね。それに、娘が呑んだらどうなるのか、親としても知っておかなくては」
妙な正義感を振りかざし、それを免罪符にして立ち上がったグレコリーは、クーラーに入ったシャンパンボトルを手にしようとした。
しかし、
「ダッド、これ以上呑ませたら、アル中になるよ」
そう止めに入ったのは、匠海だった。
「む? そうか? じゃあ残念だけど、ヴィヴィはもう、おしま~~い」
何故そこで、長男の言うことを鵜呑みにするのか。
父はおどけて、ヴィヴィに両手を挙げて見せた。
「え~~? まだ全然 酔ってないもんっ」
ソファーの上にぺたりと座り込んだヴィヴィが、甘えた声を出すが、
「クリス、止めた方がいい」
妹に直接言うと角が立つと思ったのか、匠海は次に弟にそう助言してきた。
サンルームで甥っ子と遊んでいたクリスは、静かな瞳で皆を見回し、肩を竦め。
匠斗を瞳子に預けると、ヴィヴィのソファーまでやって来て、
「ヴィヴィ、もう、おしまい……」
終了を告げる言葉と共に、妹の手から簡単にグラスを奪い取ってしまった。
「やだやだぁ~~」
手持無沙汰になり大きなクッションを抱え込んだヴィヴィが、金の頭をふるふると振り、駄々を捏ねる。
(なんでお兄ちゃんにそんな事、指図されなきゃいけないの? 私、まだ呑めるもんっ)
「ヴィヴィったら、いつもこんなに飲むの?」
ダイニングから聞こえてくるジュリアンの少し呆れた声音に、ヴィヴィの桃色に染まった頬がぷうと膨らむ。
(いや、最初に呑ませたの、マムでしょうが……)