この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第9章
「おや……。ありがとう、匠斗……」
抱えていたチェロを床に置いたクリスが、そう礼を言いながら椅子から立ち上がり。
執事から甥っこを預かると “高い高い” を始める。
「ふう……。結構、サマになったよね~。そろそろ新しい曲にする?」
テーブルに楽器を置いたヴィヴィは、五十嵐が紅茶を淹れてくれているソファーへと移動する。
「そうだね……。ヴィヴィも、やりたいの探しておいて……?」
匠斗を抱っこしながら、隣のソファーに腰を下ろしたクリスに、ヴィヴィはにっこりと笑う。
「解かった~。わ~、何しようかな~?」
(ピアソラもいいし、ショスタコビッチなんかも、捨てがたい。むむむ……)
暖かなティーカップを細い両手で包み、にまにまし始めたヴィヴィに、
紅茶を淹れ終えた五十嵐が、柔らかな声で口を開いた。
「私は音楽に造詣は深くないのですが。お2人の演奏は “音遊び” といいますか、追い駆けっこをして遊んでらした、幼少の頃が思い起こされて、とても好きです」
兄の執事からの称賛の声に、双子は揃って礼を述べた。
「特に、パッサカリアは、2人でどんどん変奏を重ねていくのが、凄く楽しいの!」
ヴィヴィが面白そうに五十嵐に説明すれば、
「確かに……。この曲の、ユニゾンの難易度の高さ……。双子ならではの息の合いやすさ、は重要かもね……」
クリスも こくこく頷きながら、そう同調する。
そして、その腕の中、じ~~と叔父を見上げていた匠斗も、
こくこく。
細い黒髪が愛らしい、丸っこい頭を振って真似し――
それを見ていた大人3人に、
「きゃあ、可愛いっ♡」
「匠斗、もう一回「うんうん」して……?」
「はあ、何てお可愛らしいのでしょう」
そう賑やかに騒がれたのだった。