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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第1章  

「分かった、早速明日借りてくるね。……ていうか、ごめんね? 第7週目で、クリスだって忙しいのに……」

 途端に申し訳無さそうな表情を浮かべたヴィヴィ。

 クリスが昨年の10月から 経済・経営学部へと編入したオックスフォード大学は、10月~翌年6月までの3学期制で。

 1学期:10月~12月 → ミカエル

 2学期:1月~3月   → ヒラリー

 3学期:4月~6月   → トリニティー

 という名前が付けられている。

 各学期は8週間と短いが、学生に言わせるとそれが “限界” らしい――色々な面で。

 その魔の8週間の7週目と言う事は、クリスにとっては途轍もなく多忙の日々の筈。

 なのに、10月に同じカレッジへの編入を決めたヴィヴィの為に、貴重な時間を割いて勉強を見てくれていた。

 英語圏最古の大学、オックスフォード大学。

 ケンブリッジ大学と並びオックスブリッジと称される、誰しもがその名を一度は耳にしたことがある大学は、英国オックスフォード市に位置し。

 8世紀以上に渡り、世界のアカデミズムをリードし続けている。

 しかし、オックスフォード大学というキャンパスが存在しないという事実は、意外と知られていない。

 オックスフォード大学とは――

 独立した自治権を持つ46の “カレッジ” (正確には39のカレッジと、7つの “ホール” と呼ばれるキリスト教系のカレッジ)の連合体を指す。

 全ての学生はどこかしらのカレッジに属し、そこが学生生活と学問的修練の場となる。

 そのカレッジとは別に、教育組織としての “学部” は大学の管理下にあり、講義やプログラムを運営している。

 クリス達 学生の生活の基盤は、カレッジ中心となる。

 大学に比べるとカレッジの規模はずっと小さなコミュニティーで、学生数は大体200名~300名程度。

 1年生はカレッジの寮で教員と共に起居し、学問の修練に励み。

 クリスの様に2年目以降は、カレッジの寮に残るか その近くに居を構え、続けてカレッジで研鑽を積んでいく。

 琥珀色の薫り高いコーヒーを愉しんでいると、玄関を開錠する音に続き、

「た~だ~い~まぁ~~……」

 まるで地獄から這い上がって来た罪人の如き声音で、同居人が帰宅を告げた。

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