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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第9章       

「3回転アクセル」

 荒河の冷静な声と、

「降~りたっ 何とか降りたっ!」

 刈谷アナの心底ホッとした声。

 ややツーフット気味に着氷したが、それは流れを止める程では無かった。

 弦楽器の軽やかなピチカートに合わせ、フリーレッグの膝から下を、

 観客を挑発する様に目力強めに、カッと後ろへ蹴り上げれば。

 アクセル成功の興奮に続き、場内からワッと歓声と感嘆の声が上がった。

 バスクラリネットの渋い音色ののち。

 左軸足でバックアウトから、ウィンドミルスピンへ。

 そのままシットスピン。

 そして、右軸足へ変えてのパンケーキスピン。

「バックエントランスからの、足替えのコンビネーションスピン」

 ラストはフリーレッグを軽く頭上へ引き上げた、I字スピンで締め括る。

「回転がどんどん速くなっていく、良い回転のコントロールをしていますね」

 優雅な第一主題の途中から踏み始めた、ステップシークエンス。

 女性のしなやかさを生かした振付と、ディープエッジを存分に披露していく。

「今の篠宮はジャンプだけでは、勿論ありません。場内を魅了するこのステップ」

 刈谷アナが解説する中、

 第二主題の冒頭、オケの「ザ、ザッザッザン」という音色に合わせ、

 深紅のヒップスカーフを、黒グローブの両手で掴んだヴィヴィは、顎を上げながら胸を張り。

 見得を切る様に、短いスカートを左右へとはためかす。

 ヴァイオリンの装飾音符と、切ない音色が引き立つ第二主題は、

 アルゼンチン・タンゴの俊敏さ、切れの良さを色濃く出しながら、残りのステップを踏み分ける。

「こういった音楽の抑揚に動作が付いていくところ、見ていても引き込まれますね。細やかなのにどんどんスピードに乗っていくステップシークエンス、非常に素晴らしいです」


―――――
※ウィンドミルスピン:フリーレッグと上体を風車の様に旋回させるスピン
※パンケーキスピン:シットスピンからフリーレッグを軸足の膝上に乗せ、上体を被せたスピン 
 旨そう…… 
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