この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第9章
「3回転アクセル」
荒河の冷静な声と、
「降~りたっ 何とか降りたっ!」
刈谷アナの心底ホッとした声。
ややツーフット気味に着氷したが、それは流れを止める程では無かった。
弦楽器の軽やかなピチカートに合わせ、フリーレッグの膝から下を、
観客を挑発する様に目力強めに、カッと後ろへ蹴り上げれば。
アクセル成功の興奮に続き、場内からワッと歓声と感嘆の声が上がった。
バスクラリネットの渋い音色ののち。
左軸足でバックアウトから、ウィンドミルスピンへ。
そのままシットスピン。
そして、右軸足へ変えてのパンケーキスピン。
「バックエントランスからの、足替えのコンビネーションスピン」
ラストはフリーレッグを軽く頭上へ引き上げた、I字スピンで締め括る。
「回転がどんどん速くなっていく、良い回転のコントロールをしていますね」
優雅な第一主題の途中から踏み始めた、ステップシークエンス。
女性のしなやかさを生かした振付と、ディープエッジを存分に披露していく。
「今の篠宮はジャンプだけでは、勿論ありません。場内を魅了するこのステップ」
刈谷アナが解説する中、
第二主題の冒頭、オケの「ザ、ザッザッザン」という音色に合わせ、
深紅のヒップスカーフを、黒グローブの両手で掴んだヴィヴィは、顎を上げながら胸を張り。
見得を切る様に、短いスカートを左右へとはためかす。
ヴァイオリンの装飾音符と、切ない音色が引き立つ第二主題は、
アルゼンチン・タンゴの俊敏さ、切れの良さを色濃く出しながら、残りのステップを踏み分ける。
「こういった音楽の抑揚に動作が付いていくところ、見ていても引き込まれますね。細やかなのにどんどんスピードに乗っていくステップシークエンス、非常に素晴らしいです」
―――――
※ウィンドミルスピン:フリーレッグと上体を風車の様に旋回させるスピン
※パンケーキスピン:シットスピンからフリーレッグを軸足の膝上に乗せ、上体を被せたスピン
旨そう……