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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第10章
予想外の突っ込みに焦り、次第に加速していく鼓動。
その一方、変な汗が吹き出し。
金色の前髪の影、こめかみには冷や汗が たら~と垂れていた。
「おそらくヴィヴィは、このモデルが部分的に中国に妥当しない事は、感じ取っていたのかしらね?」
編入して初めてのチュートリアルだからか。
そうフォローしてくれたチューターに、ヴィヴィは思わず首を縦に振る。
「は、はひ……。じゃなかった、はいっ」
(いや……。ていうか、本当は、ただ、失念してただけっす……orz)
そう、胸の中でゲロリながら。
「それに、開発独裁モデルもね?」
「あ! そうですね。台湾や韓国において成功経験のある、開発独裁モデルとの検証もすべきですね」
新たな視点を授けて貰った事に感謝しつつ同意したヴィヴィに、ウィルが両手をポンと叩いて合点する。
「ああ、ヴィヴィの育った日本も、長いスパンで考えると、開発独裁モデルが当てはまるよね?」
「あ、うん。日本は明治期以降、長期間に渡って軍部の力が強く、有能な官僚に政策決定を任せてきて。それが初期段階で “独裁的政治体制” とも言えるかな? そして戦後、民主化の元に発展してきた……。特殊な開発独裁モデル、と言い換えることは難しくないと思います」
そう同意したヴィヴィに、ディナ博士は大きく頷いた。
「では、そのプロセスも掘り下げて、最終的なエッセーを提出するように」
「分かりました」
取り敢えず着地点を見て、ほっと肩の力を抜いたその時、
「ヴィヴィ。初回にしては、的を得た検証だったと思うよ。来週も頑張って?」
黒髪の下、秀でた額が印象的な女博士は、にっこり微笑んで湛えてくれ。
「は、はいっ ありがとうございます」
思わず、手にしていた用紙をぐしゃりと握り締めてしまった。
「じゃあ、次、ウィル、お願い――」
そうして及第点を貰ったヴィヴィは、若干 腑抜けながら、自分の席へと戻ったのだった。