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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第10章     

 その翌朝。

 オックスフォードの屋敷、2階の右端の一室。

 白いベッドの上、文字通り大の字で寝そべっていた華奢な肢体。

 細い指先が一瞬、ひくりと動いたかと思えば、次の瞬間。

 ばっと跳ね起きたヴィヴィの顔から、上に乗っかっていた書物がずり落ちる。

「…………???」

 煌々と小ぶりなシャンデリアが灯る私室で、現状が呑み込めず、大きな瞳をぱちぱちと瞬きしていたが。

 ベッドサイドの置時計に、すっと視線を滑らせた途端、

「……~~~っ」

 起き抜けの頭を抱えたヴィヴィは、ぼすんと頭からベッドに突っ伏した。

 現在、10月26日(木)の早朝3:50.

 昨夜の内にエッセーの手直しをする筈が、どうやら関連書物を紐解いている間に堕ちてしまったらしい。

 そして、羽毛布団に沈んでいたスマホを、恐るおそる取り上げれば、

「あ゛~~っ やっちゃった~~っ」

 途端に、声を押し殺した悲鳴が上がる。

 昨夜の23:30きっかり。

 匠海からの着信とメールがあった。

 ここ1週間の睡眠不足と、極度の緊張感からの解放が重なり、爆睡していて全く気付けなかった。

(うぅ……、どうしよう……っ)

 半泣きの表情を浮かべつつ、小さな頭の中では日本との時差を逆算する。

 オックスフォードの4時は、日本の12時だ。

 今、折り返しの電話をすれば、もしかしたらランチタイム中の匠海が、出てくれるかもしれないが。

 同時に “4時に起きている” という現状も筒抜けになり、心配を掛けてしまいそうで。

 重ねて、

 それでなくとも、こちらから電話をする事など、

 今の自分の立場からすると、恐ろしくて出来る筈も無く。

「………………」

 匠海からのメールに目を通し、スマホを両手に包み込んだまま、しばらく ぼ~としていたヴィヴィ。

 やがて、のそのそとベッドから降りると、手早く身支度を終える。

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