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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第10章
まだ真っ暗な屋敷外に出ると、ここ最近 愛用しているチャリンコに跨り、
早朝で極寒のオックスフォードの街並を、震え上がりながらも3分で走り抜け。
24時間 学生に門戸を開いてくれる、カレッジの図書館へと到着したのだった。
Title:親愛なる ヴィクトリア
Letter:
電話したけど寝てるようだからメールにするよ
たぶんチュートリアルで苦心してるんだろうね
最近、バンビのお目めの下にクマがいて
心配してた
ヴィクトリアはきっと
俺が傍にいても 助けを求めないんだろうね
自分で乗り越えてこそ 身に付くものということを
お前はちゃんと解かっているから
今しか出来ない事をしっかり頑張りなさい
でも、絶対に無理はしすぎないように
愛しているよ
P.S.
et ex mente tota
sum presentialiter
absens in remota.
ラテン語で記された追伸は、
それからのヴィヴィにとって、大きな心の支えとなった。
et ex mente tota
sum presentialiter
absens in remota.
―たとえ遠く離れようとも
私の心のすべては お前と共にある
それは、自身のFS『カルミナ・ブラーナ』の25曲ある内の1つ、
【Omnia sol temperat ―太陽は万物を調合する】
に含まれる歌詞を引用したもの。
例え、テレビ電話で互いの近況が報告出来ても、
元気そうな姿を見られても。
身に余る程の、愛の言葉を囁かれても。
余計に募る。
面と向かって逢えない寂しさ。
遠く離れている心細さ。
目の前にあるのに、触れられない切なさ。
そして、
どうしても、ふとした瞬間に想ってしまう。
あの人は今、
“何処で誰と何をしているのだろうか――?”
胸に過ぎる不安を抑え込み。
考えても何の得も無い思考を遮断し。
見るべきで無いものから視線を逸らし、硬く目蓋を閉じる。
それでも、
どう仕様も無くなって、
自分の心と感情を持て余した時。
ヴィヴィはつい、口ずさんでいた。