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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第10章     

 SPではまあ、いつも通り演技出来たのだが。

 FSでは、冒頭の3回転アクセルは飛ばせて貰ったものの、

 調整不足を理由に、3回転アクセルからのコンビネーションジャンプには、ショーンコーチから「STOP」がかかった。
 
 加えて、最後の3回転サルコウが1回転へとすっぽ抜けた。

 それでも、FS2位と上位を守り抜いたのは、他の要素で前回のNHK杯よりも高いGOEが付いたから。

(ほ、本当に、よかったぁ~~っ (T_T))

 大会実行委員会のお偉いさんに、メダルを掛けて貰っている最中にも、

 1ヶ月前、匠海と交わした会話が脳裏を過る。



『グランプリファイナル。今年はフランスだろう? 観戦に行こうと思って』

「ほ、本当……?」

『本当。だから、頑張れよ? 来月のエリック・ボンパール杯』

「う、うんっ 頑張る! 私、死ぬほど頑張るっ」

『 “死ぬほど” は頑張んなくていい』



 そう豪語した手前、絶対に絶対に失敗は許されなかったのだ。

 色々と内容的には悔いの残るものだったが、それらを真摯に受け止め。

 翌日からまた始まる大学スケジュールの為、早々にフランスから英国へと戻った。



 しかし、その翌日の月曜日。

 ヴィヴィの目の前には、予想だにしない人物が現れたのだ。

「初めまして。俺はフィリップ。君、ヴィクトリア 篠宮 だよね?」

「……は、はあ……」

 他の学部の同級生達と、カレッジのホールでランチを囲んでいたヴィヴィ。

 見も知らぬ男性の自己紹介に、失礼ながらも その顔をまじまじと見上げてしまった。


 
 いきなりだが、断言しよう。

 自分は決して “面食いでは無い” という事を――!

 例え、

 現在お付き合いしているお相手が、日本人離れした美麗男子でも。

 例え、

 常に傍にいる双子の兄が、女子から「きゃ~きゃ~」言われる、王子様みたいな美少年(美青年?)でも。

 例え、

 幼少の頃から世話を焼いてくれる執事が「いぶし銀❤日本男児」と英国子女からモテようが。

 決して、決して。

 自分は外見で人間を判断しないし、相手の容姿に気を取られる事は無いと!


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