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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第10章     



 だが。

 だが、しかし――。
 
 それが今までに目にした事の無い “超絶美形男子” だった場合。

 その限りでは無いのかも知れない(自信喪失)。



 現に、ヴィヴィは目の前にそびえ立つフィリップと名乗る男に、ほけ~~としていたし。

 その場に居合わせた周りの学生達も、男女とも1人残らず男に見惚れていた。

 もう、ある程度の察しは付いているであろうが、あえて描写するのであれば、

 目の前の男は「人外の容姿とは、かくや――?」と言わんばかりの “超絶美形男子” だったのだ。


 肩上まである少し暗めの金髪は、緩やかに波打ち。

 滑らかな白い額の下、意志の強そうな眉。

 彫りが深く、二重どころか三重はある、若干垂れ目なアーモンド形の瞳。

 その色は快晴の空や、透明度の高い海を連想させる、鮮やかな蒼。

 すっと伸びた高い鼻に、均整の取れた唇。

 1つ1つの顔のパーツが、際立って美しく。

 それらが集結して1つの顔を作り上げた時、そこに現れたのは 正に――

「ギ、ギリシャ彫刻……」

 薄い唇から零れた単語に、隣に腰掛けていた地理学の2年生・ルーシーも、ぶんぶん頷いて同意していた。

「お~~い、お~いってば。聞いてるかい?」

 自分の顔の前で大きな掌を振る相手に、ようやく我に返ったヴィヴィ。

「あ……っ し、失礼しました。えっと、確かに自分が 篠宮 ヴィクトリアですが、何か?」

 やっとまともな返事を発したヴィヴィに、フィリップは にっこりと微笑み、

「うん。俺、君に一目惚れしたんだ」

 そう、意味不明な言葉を発した。

「…………は…………?」

「だから、俺、先週末のフランス杯で、君に惚れてしまったんだ」

 具体的に言い直したフィリップに対し、

「……は……い……?」

 ヴィヴィはというと、まるで宇宙人と会話している気分だった。

(な……、何 言ってるんだろ、この人……?)

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