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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第10章     

「あれ? う~~ん。俺の英語、下手? 通じない? フランス訛りなのか? じゃあ、これはどうだろう?」

 そう独りごちる相手に、相変わらず ほけ~~としていたヴィヴィ。

 しかし、次に寄越された言葉には、さすがに驚愕した。

「俺の恋人になってくれないか? ヴィクトリア」

 フィリップの良く通るテノールが、広いウォルフソン・ホールに轟いた途端、

「「「「え゛ぇ~~~っ!?」」」」

 ヴィヴィを除く学生や教員達が、一斉にそう叫んでいた。

 先程までは水を打ったように静かだった周りが、途端に騒ぎ出す。

「な、何で王子がっ!?」

「確かに、ヴィヴィは物凄く可愛いし。とっても良い子だけどっ」

「でも、童がn……。い、いいや、さすが皇太子。目の付け所が違うよな~?」

 何だか、聞き捨てならない単語を耳にした気がするが。

 それよりも、ヴィヴィが引っ掛かったのは、

「へ……? 王子……? 皇太子?」



 何のこっちゃい? 

 あだ名か?

 通し名か?

 まさかの源氏名か? 



 確かに目の前の男は、王子っぽい容姿ではあるが。

 こてんと首を傾げたヴィヴィの手を、慌てた様子で引っ張ったのは、地球科学を専攻する3年のシャン。

「ヴィヴィったら、知らないのっ!? この人、モニャコ公国の、皇太子サマだよっ?」

 耳元でそう囁かれた瞬間、ヴィヴィの脳裏に過ったのは、

 今から1ヵ月も前。

 同居人のダリルが、自慢気に発していた言葉――



『なんと、モニャコ公国の皇太子が、オックスフォード大学に編入したらしいのヨンっ!』



 その言葉と現状が、やっと小さな頭の中で繋がった瞬間、

「うぇええええええ~~~っ!?」

 そう大絶叫したヴィヴィに、そこに居た全員が、すかさず突っ込んだのだった。

「「「「気付くの、遅っ!」」」」



↑↑↑長い回想 終了↑↑↑





 まあ、そんなこんなで――

(「どんなこんなだっ!?」 by ヴィヴィ)

 4日前。

 公衆の面前で “一国の皇太子に 愛の告白を受ける憂き目” に遭ってしまった、不幸女・ヴィヴィ。

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