この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第10章
よって、
(ここは “無視” だな! “無視する” に限るなっ!!)
そう打開策を見出したヴィヴィは、ぷいと顔を背け。
あたかも190cmの大男が見えていないとでも言うように、その後ろに控えている朝比奈にお茶を頼む。
そして、クリスとダリルが静観するリビングを突っ切ると、暖房の行き届いたサンルームに向かい。
大きなビーズクッションに埋もれながら、昨日のチュートリアルで また駄目出しされたエッセーの、最終チェックを始めた。
昨年、学部3年生として同大学に編入したクリスは、今の自分の様に死にそうになっている様子は全く無かった。
オックスフォードのチュートリアルの厳しさは有名で。
準備の為の徹夜は当たり前、本番の前日は緊張で眠れない夜を過ごす学生も多いというのに。
双子の兄はそれに加え、株や投資にも手を出していながら、あんな涼しい顔でスケートも熟してしまうのだから。
(……本当に “天才型” は恐ろしい……っ)
匠海だってそうだ。
オックスフォードでのMBAの講義と、篠宮證券・ロンドン支店での仕事を両立していたのだから。
兄2人と自分とは、頭の出来があまりにも違い過ぎる。
華奢な肩を竦め、内心舌を巻いていたヴィヴィ。
「お嬢様。紅茶が入りましたよ」
そう柔らかな声で話し掛けられ、はっと我に返り顔を上げれば、
「や~~い、引っかかった」
超絶美形の顔に、悪ガキの表情を浮かべたフィリップ王子が、茶器を手に にやにやしていた。
「~~~~っ!!!」
怒りに悶絶し、顔を真っ赤にするヴィヴィにも、
「ははっ 怒った顔も、可愛いなあ、ヴィー」
フィリップは呑気に笑っていやがる。
「もう……っ!! ちょっと! 私のファンだって言うなら、心中 察してよねっ!」
ビーズクッションを ぎりぎりと両手で握り締め、ヴィヴィはとうとう心を鬼にする。
ちなみに、王子は「ヴィーに惚れた」とは言ったが「ヴィーのファンだ」とは言っていないが、この際どうでも良い。