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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第10章
ミカエル・ターム(1学期)も、残り3週程となった頃。
ヴィヴィは未だ、しつこいヤツとの戦いを強いられていた。
そう、ヤツだ――。
(一国の王子とは言え、ヴィヴィ様は容赦など致しませんぞえ~~)
題して、
【フィリップ☠ホイホイ大作戦】
【その① 相手に全く興味の無い事を解らせましょう☠】
「俺はね、ボルドーの会場のロイヤルボックス(貴賓席)で、君を初めて目にした時。すぐにピンと来たんだよ」
“5回に1回” の取り決めなんぞ、どこ吹く風。
オックスフォードの篠宮邸に入り浸るフィリップは、長過ぎる脚を組み換え、キメ顔で続ける。
「ヴィー。君こそが “俺の求める女性” だってね」
「……あっそ」
休日の朝練から戻って来たヴィヴィは、朝比奈が用意してくれた昼食をパクつきながら、生返事をする。
(浅漬けの柚子、うんまい)
「氷上のヴィーはまるで、女神の化身だった。颯爽と現れたかと思えば、わずか4分で見事、俺の心を打ち抜いてくれた……っ」
まるで舞台俳優の如く、大げさな身振り手振りで語る超絶美形男子に、
隣の席のダリルは「王子様ぁ♡」と、うっとりと見惚れていたが。
「……ふ~ん」
ずずっと味噌汁を啜るヴィヴィの瞳はと言えば、執事特製・ブリの西京焼きに注がれていた。
(あ~~……。そろそろ、ブリ大根も食べたいな……)
「ヴィー、考えてもごらん? 遠く離れたフランスで出会った男女が、こんなに傍に住んでいたんだよ? これはもう “運命” としか、言いようがないじゃないか!」
「へ~へ~」
王子のその理屈だと、フランス杯に一緒に出場していたクリスとも “運命” を感じる筈なのだが。
男色家では無いのだろうか?
そんな突っ込みすら面倒で、食べ終えたランチを前に、
「御馳走様でした。美味しかった~♡」
今日一番の笑顔を見せたヴィヴィ。
「お粗末さまでした」と、微笑む執事。
「か、可愛い……」と、萌える王子。
そして、
「眠い……」と、どうでも良さそうなクリス。
そうして、今日も平和な一日が過ぎていく――