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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第10章     



【その② 自分を異性と認識させてはなりません☠】



「私。男嫌いだから」

 また、ランチの時間を見計らい訪ねて来た、フィリップを目にした途端。

 ヴィヴィが発したその一言に、王子は何故か そんなには驚かなかった。

「え~? 本当に? もったいないなあ。ヴィー、この世には男と女しか、いないんだよ?」

 まるで大型犬の様に後ろを付いてくる、190cmの大男をちらりと振り返り。

「……ダリル……」

 そう言及すれば。

「……男と女と “その中間” しかいないんだぞ」

 真顔で言い直した相手に、思わず「ふっ」と笑ってしまった。

 いかんいかん。

 ダイニングテーブルに腰を下ろしたヴィヴィの、目の前に陣取った王子。

「なのに恋をしないなんて、人生の半分は損してるよ」

 続けられた主張に、薄い唇からは長く深い息が吐き出される。

「半分って……。大げさな」

「俺は愛に生きるぞ! わが身を焦がし尽くす情熱! 迸る肉体の躍動! ああ、恋って素晴らしいっ」

「………………」

 本当に、王子よりも喜劇役者の方が、適性があるのではないだろうか。

 蒼の瞳をうっとりさせ己に酔っているフィリップを、瞳の端で一瞥したヴィヴィ。

 次いでその視線は、背後に立つ1人の男へと向けられる。 

「……この人、本当に王子……?」

 そんな失礼な問いに対し、

「いかにも。我が国 継承権 第1位の皇太子にございます」

 人好きする微笑みを湛えて返してきた相手は、フィリップのお付きの男。

「……大変ねえ、心中お察しするわ」

 ヴィヴィの同情の言葉に、

「恐れ入りますぅ~」

 王子の目の前なのに、そうニンマリしながら返して来た付き人は、

 きっと只者ではないのであろう。




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