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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第2章
危なげない運転で、15分掛けてリンクに到着したヴィヴィは、
「着いたよ、起きて?」
ワインレッドの革の助手席に眠るクリスを、やんわりと揺り起こした。
双子はいつも通り、柿田トレーナーのもとで身体を創り。
ショーンコーチとサブで付いてくれる女性コーチの元、集中して午前中のレッスンを終えた。
「クリス、シャワー浴びてく?」
リンク脇のベンチ。
ヴィヴィは隣に腰掛けたクリスに、スケート靴の紐を解きながら尋ねる。
「うん、そうだね……」
今朝の7時半。
執事のリーヴが、いつも通りに朝食を届けてくれた際、
『皆様はまだお休みでしたね。朝食は採って頂ける様、用意して出て参りましたので、ご心配には及びませんよ』
そう発していた。
という事は、現在時刻12時の今はまだ、両親と兄夫婦はあの屋敷に滞在している可能性が高く。
スケート靴を足から引き抜きながら、嘆息したヴィヴィに対し、
「あ……」
顔を上げていたクリスが、小さな声を上げる。
「ん……? どうしたの?」
脱いだそれを膝の上に乗せたヴィヴィが、双子の兄の視線の先を辿り、
「ふぎゃ……っ!?」
車に轢かれた蛙の断末魔(聞いた事無いけど)――の如き声を上げた。
なんと、2階にあるカフェテリアから、父と母が両腕を大きく振っているではないか。
その隣には、匠斗をだっこした、瞳子も微笑んでいて。
「うわぁ……」
「21歳にもなって、参観日、みたい……」
押し並べて嫌そうな表情を浮かべる双子の顔は、本当に瓜二つで。
「ふ……っ」
背後から聞こえたその笑い声に、兄妹は揃って振り返る。
「兄さん……」
「………………っ」
そこにいたのは、微笑みを浮かべた匠海だった。
慌てて視線を外したヴィヴィは、早朝の様にばっちりと兄の顔を目にする事だけは回避出来た。
出来た、けれど。
半袖のウェアに包まれた胸が、急にそわそわと落ち着きを無くしていた。