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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第2章
「よ。本物は初めて見たけど、良いリンクだな?」
「だね……。 “あのカメラ” も、助かってるよ……」
「ふうん、そうなんだ?」
兄2人が仲睦まじく(?)会話を交わす傍ら、
ヴィヴィはと言うと、匠海の纏っている洋服に目が釘付けとなり。
何故か握り締めた両拳を、ぷるぷると小刻みに震わせていた。
黒のポロシャツに、チャコールグレーのクロップド・パンツ。
ポイントに、ポロシャツの下に白黒のボーダーニットを巻いている、その姿。
別になんてことないコーディネートなのだが。
けれど、大きな灰色の瞳は、ある一点にロックオンしていた。
「……~~~っ」
(お、お兄ちゃんが、私の “プリングルス” を着るなぁ~~っ!!!)
――いや、君のじゃないし。
兄が纏っている黒のポロシャツは、双子のスポンサーである “プリングルス オブ スコットランド” のものだったのだ。
しかも腹立たしい事に、9頭身の匠海が纏えば、1着10万円でもしそうな上等な洋服にさえ見えてしまって。
マスコットのライオン君のシルエットを、目から出すレーザービームで焼き切りそうな、強烈な視線で睨み付けていると。
「ヴィヴィ……、ほら、シャワー、浴びにいこ……」
やや呆れ顔のクリスに、手を引いて更衣室へと連れて行かれた。
「……クリスのが、似合うもんっ」
そうぼそりと零したヴィヴィに、
「ヴィヴィ……、大好きだよ……」
ぽんぽんと金の頭を撫でたクリスは「じゃあ、後で……」と言い置いて、男子更衣室へと消えていった。
――で、
何故に篠宮御一行様が、わざわざリンクにまで押し掛けて来たかと言うと――。
「――っっ な、なっ なにぃ~~っ!?」
オックスフォード・SCの裏口を出た途端、ヴィヴィは細い悲鳴を上げていた。
父・グレコリーの、その肩の上で。
一緒に居た筈のクリスは、何故か無表情のまま、じ~~と事の成り行きを見守っているだけで。
「ク、クリス……、た、助けて……?」
腰から上の上半身を父の背に垂れ下げられ、頭に血が昇りそうなヴィヴィが、そう懇願しても。
「…………ごめん」
そうぼそりと呟いたクリスは、明後日の方角へと顔を背けてしまった。
「………………っ」