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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第10章
なんだろう。
イケメンは障害馬術に惹かれ易い傾向、でもあるのだろうか?
「「あ~」って。普通の女の子は「え~~っ 馬術っ!? きゃぁ! 白馬の王子様~~♡」って喜んでくれるのに」
「………………」
(け……っ そっちが狙いですかい……)
不満気なフィリップに対し、大きな瞳を胡乱に細めたヴィヴィ。
再び、図書館へと歩き始めながらも、何か引っかかりを覚えていた。
五輪出場……?
馬術……?
一国の皇太子が、障害馬術なんかの花形競技で五輪に出た日には、物凄く騒がれたろうに。
そういえば自分も、東京五輪で生の馬術を見て……。
「……え……?」
思わずその場で足を止めたヴィヴィに、後ろから着いて来ていたフィリップが、
「おっと」とぶつかりそうになり、つんのめる。
「フィリップ……もしかして、東京五輪……来てた?」
くるりと後ろを振り返り、そう問うたヴィヴィに、大男は首肯した。
「ああ、出場してたよ」
「うぇえええええ~~っ!?」
前後の見境なく、掠れ声で絶叫したヴィヴィに、
「え? 何?」
端正な美貌に、きょとんとした表情を浮かべるフィリップ。
「う、ううんっ な……何でもない」
(うそぉ……っ 私達、昔 会ってたんだ……。あ、いや、自分が一方的に “王子を見た” んだけど……)
2020年の東京五輪。
当時高校生だったヴィヴィは、BSTの学校行事で他の生徒達と馬術会場に居た。
英国大使を父に持つ、親友のカレンが、
『あの人! 王子様だ……っ』
そうフィリップに気付き。
双眼鏡を通して見えたのは、
黒いヘルメットの下、まるでギリシャ彫刻の様な美貌を誇る男だった。
『か、かっこ良すぎて、もう異次元で、よく分かんない……』
『確かに。綺麗過ぎて、人間じゃないみたいだよね……』
そうカレンと言い合ったのは、懐かしい思い出――
(……うわぁ……)
可愛らしい顔を、苦虫を噛み潰した様に歪めるヴィヴィを、王子は不思議そうに見下ろしていた。