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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第10章     

「……ほんと?」

 確かに、視線の先にある兄の表情からは、

 苛立ちや腹立たしさという感情は、微塵も読み取れないけれども。

『ああ。俺はヴィクトリアを信じているし』

 そこで、言葉を区切った匠海は、大きめの唇で意味あり気に にっと笑い、

『俺のことも信じているから』

「え?」

 思い掛けない返しに、きょとんとするヴィヴィに対し、

 組んだ両手の上に顎を乗せ、こちらに微笑みかけて来る匠海からは、

『俺は “ヴィクトリアに愛されるに足る” と思っているから。だから、大丈夫』

 そんな、大人の余裕が滲み出ていた。

「……す、凄い自信……」

 思わず、ふっと吹き出してしまう。

 出来る事ならば、その自信の半分で良いから、自分に分けて欲しい。

『間違った自信、かな?』

 片目を眇め、ニヒルに笑む兄に、

「ううん。間違ってない」

 妹はうっとりした微笑みを浮かべ、金の頭を横に振る。

「私が愛してるのは、お兄ちゃんだけよ。これまでも、これからも」

 噛み締める様に、発された告白。



 それは、

 揺るぎ無い真実。

 変えられない現実。

 だから、

 だから私は、

 こんな大罪を犯し続けている。



『好きだよ』

「……うん」

『愛している』

「うん」

『2週間後に、会えるよ』

 その囁きに、思わず込み上げた歓喜。

「うんっ♡♡♡」

(もうすぐ、もうすぐっ 本物のお兄ちゃんに逢えるぅ~~っ!)

『ああ、ヴィクトリアには、笑顔が一番だね』

 両拳を握り締め、くしゃりと笑うヴィヴィを、

 画面の向こうの匠海は、まるで眩しいものを見る様に、瞳を細めて見つめていたのだった。






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