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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第10章     

 GPファイナルは、刻々と迫って来ていた。



 件の王子は、とにかく試合が終わるまでは『篠宮邸 出入禁止』を言い渡され。

 それでもへこたれる事無く、双子のカレッジまで訪ねて来ていた。

「ファイナルも、応援に行くからね~♡」

「来ないで!」

 ぴしゃりと制するヴィヴィに、2歳上のフィリップは甘えた声で懇願してくる。

「え~~。じゃあ、ロイヤルボックスじゃなくて、変装して一般客に紛れるから。だったら、いいでしょ?」

 目の前のこの男には、例えサングラスを掛けさせようが、

 ニット帽を被せようが、付け髭を着けさせようが。

 この溢れ出る “ギリシャ彫刻感” は、全然 覆い隠せそうも無く。

「ぜっっっったいに、貴方は一般客に紛れ込めないから、駄目っ!!」

 貴重なフィギュアファンを失うのは心苦しいが、心を鬼にしたヴィヴィ。

『篠宮邸 出入禁止』

 に加え、

『試合会場 出入禁止』

 まで食らってしまった王子は、

「クリスぅ~~、ヴィーがツンデレ過ぎてで困るぅ~~」

 そう、双子の兄に泣きつく。

 しかし、

「ツンデレ……? 人間、何事もポジティブ・シンキングは、素晴らしいよね……」

 珍しく、ぼそっと毒を吐いたクリスの、その心中は、

 大事な妹を大切な時期に、要らぬ事で悩ませた男――に対して、

 実は憤慨していた証……なのかも知れない。






 11月28日(火)。

 最近のヴィヴィにとっての火曜日は “魔の火曜日” と言っても過言では無い。

 オックスフォード大学の最大特徴と言われる、チュートリアル(個別指導)。

 それが、PPE(哲学、政治及び経済学)に在籍するヴィヴィとウィルフレッドには、毎週水曜日に行われるからだ。

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