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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第10章
ちなみに明日の論点は、社会哲学から――
①リアル・エッセンス、ノミナル・エッセンス、両者の非一致性に係るロックの議論を、C.I.ルイスの思考実験を参照しつつ、考察
②アーキタイプ論を、複数性、オリジナルの喪失等々の観点から再構築し、分岐アーキタイプ論を提案
③現代の「指示の理論」における本質主義の復興=ネオ・アリストテレス主義を、②を踏まえつつ批判的に検討
(な……、何のこっちゃいっ!? by作者)
よって。
常と同じく夜練を終え、23時に屋敷に戻ったヴィヴィは、手早くバスを使い。
匠海から掛かってきた電話で、束の間の天国を味わい。
そして現在。
日付も変わり、チュートリアル当日の早朝1時。
私室のデスクに噛り付き、ノートPCを覗き込みながら「うんうん」唸っていたりする。
ただ、ふとした瞬間に視線を上げれば、
目に留まるのは、だだっ広いワンルームの壁を覆い尽くす、ライラックピンクの柔らかな色味。
自分が死の淵を彷徨っていた際、双子の兄が妹の事を想いながら、心を込めて選んでくれたもの。
(うん。辛いのは、大変なのは、自分だけじゃないっ)
まあ今、修士課程のクリスには、チュートリアルは無く。
とうの昔に夢の中――なのだが。
気合を入れ直し、終了の兆しが見えてきた課題に、また視線を落とした。
その時。
微かな物音が、屋外から聞こえた気がして。
「………………?」
大きな瞳を瞬かせ、椅子から立ち上がり。
白い窓枠が素敵な窓際に近付けば。
「あ゛……」
薄い唇から零れたのは、そんなげんなりした声と、深い嘆息だった。