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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第10章
ミカエル・ターム(1学期)の最終週。
12月6日(水)から始まった、グランプリ・ファイナルの地――フランス・パリに、ヴィヴィの姿は無かった。
会場のパレ・オムニスポール・ド・パリ・ベルシー。
そこで行われていた、メディアを入れての公式練習には、
男女シングル 各6名――全6回のGPシリーズを戦い抜いてきたファイナリスト達が、全員 出席していたのに。
「クリス~、どうしてヴィヴィ、いないのさ?」
男女入れ替えの時間。
双子の兄に不思議そうに問い掛けて来たのは、妹にご執心の “お伽の国の王子様”。
ラトビアのデニス・ヴァシリエフ(25)だった。
「うん……。まだ、大学……」
エッジに付いた氷の屑を取り除き、カバーを装着したクリス。
「え!? だって、明日にはSP……」
柔らかな金髪の下、柔和な顔を心配そうに曇らせたデニスに、
「まあ、ロンドンからパリは、2時間ちょっとだし……。ホームでギリギリまで調整する方が、ヴィヴィの負担は減らせるからね……」
そう答えた妹そっくりの顔にも、冴えない表情が浮かんでいた。
12月9日(土)――大会4日目。
英国ユーロスポーツ(British Euro Sport)の解説席には、2名の男性がいた。
実況:クリスト・ハワード
(元 男子シングル英国代表)
解説:ニッコー・スキーター
(元 アイスダンス英国代表)
「7日(木)のSPでは、
1位 ヴィヴィアン・リー(USA・21)
2位 篠宮 ヴィクトリア(日本・21)
3位 リーザ・マグノワ(ロシア・15)
という結果――」
実況のハワードの声に、解説のスキーターが続く。
「リー選手は良かったよね。3本のジャンプ全て、高いGOEを得ていた。このファイナルに合わせ、良いコンディションでフランス入り出来ていた。一方の篠宮選手は……」
若干 言い淀んだスキーターに、
「見るからに痩せましたよね?」
実況のハワードがフォローする。