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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第10章     

 リンク中央、両膝を片側に揃え座り込む、青い衣装の選手。


『運命の女神に傷つき 私は涙する』


 男性バスの静かな歌声が響く中、

 両手を氷上に右往左往させ、何かを探していたが。

 怯える様に天井を仰いだヴィヴィが、眩しそうに瞳を細め、額の上に片手を翳す。


『かつての恵みも 今は剥ぎ取られた』


 立ち上がったヴィヴィは、脅威から逃れんと必死の形相を浮かべ、

 一気に加速し、後ろ向きの助走へと入った。

 男性バスの歌声にテノールが加わる。


『まことに「豊かな緑の黒髪も

 時が至れば禿げ頭」とあるとおり』


 左軸足で、右フリーレッグを蹴り上げ、踏み切ったのは、
   
「冒頭のアクセル、飛んできました!」

 実況のハワードが、唾を飛ばさん勢いで放った言葉に、

「WoooHoooっ!! エクセレントっ 高さも着氷も完璧だ!」

 解説のスキーターも、最大限の賞賛を送っていた。

 オーケストラの間奏が響くリンクを、次の助走へと入って行く。


『運命の女神の玉座にあった その昔

 私は栄華の花冠を戴いていた』


 肌が透ける青衣装に包まれた両腕を揃え、顔前でクロスし。

 肩甲骨を開きながら後ろへと開かれていく両腕は、まるでそれ自体が、女神の携えている天秤の様。

 そして踏み切ったのは、3回転+3回転のコンビネーションジャンプ。

「ああ、流石にコンビネーションのアクセルは、回避しました」

 実況の少々残念そうな声に対し、解説の声は違った。

「3回転フリップ+3回転ループだね。2ndは予定通り、彼女にしか飛べないラブリーなループだ!」

 男性テノールとバスの、分厚い声音。


『だが 華やかな至福のときも 今は昔

 私は栄光の頂から 突き落とされた』


 右軸足で、

 フォアイン → バックアウト → フォアイン → バックアウトでのスリーターンを挟んだ後、

 両脚で飛び上がった3回転トウループ。

 演技前半のジャンプを手堅く纏めたヴィヴィが、

 トランペットが際立つオケの間奏の中、レイバックスピンへと入る。

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