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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第10章
『運命の女神の車輪は回る
私は落ちぶれ
他の者は高みに昇る』
レイバックスピン から キャッチフット・レイバックスピンへ。
最後はビールマンスピンで締め括り。
『頂にある王よ 破滅を恐れよ!』
演技前半、最後の要素――フライングキャメルスピン。
『運命の車輪に刻まれた
トロイの女王ヘクバの名も
かつての頂は遠く
今となっては車輪の下』
バタフライからのキャメルスピン。
大きくV字に開いた、金の縁取りがしっとりと輝く背で、弧を描いてのドーナツスピン。
そして、片手でブレードを掴み、片手でフリーレッグの膝を押さえて弧を描く、ハーフビールマン。
「ありとあらゆる新聞のヘッドラインで指摘されている事ですが。篠宮のどこまでも伸びていきそうなこの指使い、視線の運び方と表現力!」
「そして、この華奢な身体から滲み出る気迫もね。もう主演女優ものだよ!」
感嘆の声を上げる男2人が見守る中。
会場に轟いたのは、おどろおどろしいドラと、混声合唱の重々しい歌声。
『おお 運命の女神――』
小さな顔に強い威厳を滲ませたヴィヴィ。
肩高へ上げた右腕を、限界までその先へと伸ばし。
空を掴んだ右腕は、背中の方へ引き込む様に肘を入れ。
そして腹に巻き込んだ右肘を庇うように左腕で抱くと、
胸前、両腕でボールを保持する様に保ち。
赤く縁取られた唇を険しく開きながら、腰を起点として上半身をぐるりと旋回させる。
『お前は 移ろう月の如き
絶えず姿を変え――』
朗々と謳い上げられる合唱の中、助走し踏み切ったのは、
2回転アクセル+3回転ループ。
演技後半に入っても衰えることの無いジャンプの高さに、客席から歓声が上がる。
『満ち欠けを繰り返す
情け容赦無い 忌むべき世界』
囁く様な混声の歌声と、ファゴットの小気味良い刻みが響く中、
アクセルに次いで高難度の、3回転ルッツを降り。