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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第10章     

 ウィンドミルで締め括ったヴィヴィは、苦しそうに息を乱しながら、氷を蹴る。


『今こそ時をおかず 弦をかき鳴らせ!

 運命は強者をも 打倒するのだから』


 イナバウアーからキャッチフットスパイラル、背中で両腕を組んだアラベスクスパイラルを素早く熟し。

 そして踏み切ったのは、ジャッジ側に身体を向け、

 両腕を進行方向とは逆にめい一杯伸ばした、横向きに飛ぶバレエジャンプ。


『皆の者 我と共に嘆こう――!』

 
 ファルセットで謳い上げられる、最後の歌詞。

 バタフライから、左軸足のバトンキャメル → シットスピン。

 そして、右に軸足を替えてのシットスピン → I字スピン。
 
 小刻みなトランペットとティンパニの音色。

 重厚に響き渡る混声と、弦の厚み。
 
 ラスト。

 リンクの端。

 青く彩られた目蓋を瞑り、両腕を肩高に伸ばしたヴィヴィ。

 音の余韻を楽しむ指揮者か はたまた 運命の女神の天秤を模してか。

 両の掌を上へと掲げ、4分間の演技の最期を締め括った。



 わっと割れんばかりの歓声が上がり。

 次いで響いたのは、大音量の拍手。

 そんな色めき立つ会場の中、力なく氷に両膝を着いたヴィヴィは、

 細い肩を震わせながら、必死に荒い息を整えていた。

「素晴らしい、篠宮! 世界女王の意地を、ここフランスの地で見せましたっ」

 実況のハワードの感極まった声音に、

「ブラ~ボ! コンビネーションのアクセルを回避したのは、ショーンコーチの英断だったね。その分ストレスから解放されて、体力消耗も最小限に防げた」

 解説のスキーターが、チームにも賞賛を送る。

 そしてリンクでは、未だ氷に両手を着いてうな垂れたままのヴィヴィに、

 ぞくぞくと花やプレゼントが投げ込まれていた。

「篠宮、中々立ち上がれません。会場はスタンディングオベーション。フランスでも “ヴィヴィ” の愛称で、愛されている選手です」

「ただただ、GREAT! 眼福の4分間だったよ~っ ああ、やっぱり。篠宮選手、英国に欲しいよなあ。もちろん双子セットでね!」

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